著者まとめ:“意識は高い”が芯を持てない人事系の人に

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人材採用・人事評価の教科書

啓蒙書を読む前に専門書を

 大型書店に行って、「採用」に関する本を片っ端から見て欲しい。人材紹介業や求人広告代理店の元営業マンが書いた本が目立つだろう。
 これらの本は、個人の経験に基づいて書かれた「べき論」「心構え」を説く啓蒙書かノウハウ本に大別される。読み物としての面白さや、新たな気づきを得られる点で良い面もある。
「いい人材を採用するために」「優秀な人を見抜く目」などの言葉が躍っているが、用語の定義やアカデミックな理論との整合も検証されないこれらの本は、個人の思いを綴ったエッセーだ。
 だから採用や人材業界の新人が、業務の勉強を始める場合、これらの本から読み始めるのは勧めない。退屈でも専門書と格闘しながら、しっかりした知識習得に努めるべきだ。
 しかし残念なことに、アカデミックな理論を押さえつつ、専門知識を体系立てて整理した教科書的書籍は、こと採用業務に関してはほとんど見つけられない。
書籍ばかりか、専門家養成教育さえ、ほとんど提供されていない。
 このような問題意識から、採用業務の専門家教育プログラムを立ち上げ、その教科書として執筆したのが本書である。

ミスマッチ防止のために

 雇用のミスマッチは個々人のキャリア形成を阻害するだけでなく、企業にとっても多大なダメージを与える。
 国はキャリアカウンセラー10万人計画を打ち上げ、本人の志向に沿う就労支援を強化している。しかし、本人が「やりたいか」より、「出来るか」「向いているか」の方が、ミスマッチ防止には重要だ。
 そのためには、企業の人事が「採用」「評価」の専門スキルを向上させることが何より大事だ。採用だけでなく、企業内で評価し、フィードバックし、配置や育成を適正に行うことがミスマッチ防止に不可欠だ。そのような観点から、本書は人事評価についても紙面の半分を割いている。

人の特性差

 本書の冒頭では、個人の能力を「知能」「適性」「コンピテンシー」に分類する研究者の理論を紹介し、分析的に考察している。
 例えば、「適性」については、「職務適応」「職場適応」「自己適応(興味適応)」の三つに分類する理論を紹介している。
 理論を学べば、これまで「あの人はこの仕事に適性がない」と深く考えずに使っていた「適性」について、「職務をこなす能力がなかった」のか、「職場に馴染めなかった」のか、「興味が合致しなかった」のかと、分析的に議論できるようになる。

業務の流れに沿って

 採用パートでは、採用計画の立案、人材像の定義、面接技法など、業務の流れに沿って必要な知識を紹介している。また、採用業務に関する法律までカバーしている。
 人事評価パートでは、評価制度の基本的な枠組み、目標管理、人事評価手法などをアカデミックな研究成果などを数々示しながら解説する。
「モチベーション」だけでも、8つの学術理論を紹介している。

難しい時代だからこそ

 人口減少時代、売り手市場が続き、転職市場もますます活発になる。求められる人材を採用し、社内に引き留めるためには自身の勘や経験に頼るだけではなく、専門的な知識を身につけ、専門化として力を伸ばしていく必要がある。
 本書は筆者が理事長を務めるNPO法人の資格認定講座の公式テキストに指定しており、学びの成果を資格取得で残すこともできる。
これから人事のプロを目指す者だけでなく、すでに十分に経験を積んだ実務家にとっても役に立つ一冊と自負している。

感想

残念な 「意識高い系」からの脱皮を
 若手の採用担当者や人材ビジネス従事者は、残念な 「意識高い系」が多いように思う。
SNSで「熱く」採用論や人材論を発信するが、難解な専門書による学習を避け、ネットで聞きかじったエビデンスに乏しい知識を情報通ぶって披歴するばかりだ。そういう人は、しっかりした土台を形成できずに、すぐに成長の限界を迎える。彼らだけに原因があるわけでなく、頼るべき書籍や教育がなかったのも一因だ。
「自分のことではないか」と思い当たった人は、情報を切り貼りした「本のまとめサイト」で分かった気にならず、興味を持った本は通読する習慣を身に付けて欲しいと切に願う。

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