自閉症、ADHD、学習障害とは何か、その理解を感覚過敏という視点から一新しようとする画期的な書

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自閉症と感覚過敏―特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?

書名の通り、自閉症と感覚過敏についての本でした。感覚過敏をテーマにした類書はいくつかありますが、これらは問題を感覚にしぼり、理解を深め、対処法を提案することが中心になっています。しかし、この本は感覚過敏を感覚世界に影響を与えるだけでなく、自閉症の症状全体や発達全体に影響を及ぼすものと捉えて、支援の在り方を探るというものです。つまり、どちらかというと「手立て」でなく「見立て」についての本であり、これまでの見立て、すなわち社会関係の質的障害、コミュニケーション障害、興味の限局という三つ組の自閉症理解自体を、感覚過敏という視点から一新しようとする画期的な書でした。

少しだけ本書の自閉症の捉え方を紹介しますと、自閉症者は、新しい場面で、一度に大量の刺激を取り入れて、感覚の枠(容量)をいっぱいにしてしまい、後続の刺激が入り込めなくなってしまうといいます。つまり、私たちのように刺激を徐々に少しずつ取り込み、それら同士を関係づけていくことが難しいのです。感覚の枠に入り込めない状態で通過した後続の刺激はどうなってしまうかというと、見落とされてしまうため、周囲からは感覚の過敏性と鈍感性が同居しているように見えます。

感覚過敏とは、人が外部環境にある何らかの刺激によって強い衝撃を受けることから始まります。そしてその衝撃が強すぎて苦痛となる場合は、それを避けるために、たとえば耳を押さえるなどの回避行動が生まれます。これは刺激を受け入れにくい場合です。逆に受け入れやすい場合は、その世界に没入することになります。

また、刺激は好ましいものであれ好ましくないものであれ、強く焼き付いた場合には、記憶の中で存在し続けます。そして、周囲の状況とは独立して本人に働きかけるようになるのです。自閉症者が、ひとりごとをいったり、一人で笑ったり、怒ったりしている様子をみかけるのはこのためです。つまり、自閉症の人にとって、感覚過敏にまつわる出来事は①回避、②没入、③記憶化、④見落とし、⑤行動の切り替え困難、という五つの現れ方をすると本書では主張されています。

自閉症の当事者が記した手記についても随所で引用されており、著者の主張が当事者の経験談を通して鮮やかに浮かび上がる構成となっています。

感想

発達障害のお子さんの育児ハウツー本はあまたあれど、なんか釈然としない、腑に落ちない、うちの子には役立たないという方にぜひ。専門的な用語はほとんど出てきませんが、多様な視点から自閉症理解を進める構成になっており、私自身は3日かけて読み込み、1日かけて見直し、まとめをつくってようやく血肉となった印象です。さらりと読める入門書ではなく、深い理解を目指す本です。

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