米朝首脳会談「6.12」後の世界に通用する視座で闊達な議論を巻き起こす

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米朝首脳会談後の世界

 本書は「自衛隊を活かす会:21世紀の憲法と防衛を考える会」が2017年12月25日に主催した第15回シンポジウム「北朝鮮の核・ミサイル問題にどう臨むか」の講演内容を米朝首脳会談後に加筆修正した内容になっている。
 「自衛隊を活かす会」柳澤協二代表は「6.12会談は米朝両国の首脳が、体制保証と核放棄という双方の核心的要求を認め合った意味が大きかった。米国のドナルド・トランプ大統領がいかにブレずに核放棄への姿勢を貫けるかが重要だ」と評価する。北朝鮮核問題の本質とは米朝戦争の終わりが見えない中、金正恩党委員長が目指す核・ミサイル開発と経済発展の「並進路線」で体制保証のため「核保有」こそが唯一の策。すなわち朝鮮戦争の当事国である米朝中韓が真に終戦宣言することが必要不可欠だ。その上で「日本やロシアなどの周辺関係国を加え、安定した北東アジアの国家関係の構築や核廃絶のための協力が必要になる。日朝の国交樹立もその文脈で重要な構成要素となる。北朝鮮の国家犯罪である拉致問題解決なくして日朝国交正常化はない。重要なのは、米朝首脳の和解宣言につながるプロセスを頓挫させないように、関係国に世論の圧力を加えることだ。この対話プロセスが破綻すれば、出口のない戦争の脅威の再燃と拉致問題の解決の機会を失うことだろう」と柳澤氏は指摘する。
 共同通信の太田昌克編集委員は「トランプ氏は対話継続中の米韓軍事演習の停止を同盟国である韓国と事前に相談もなく表明し日本政府にも大きなショックを与えた。せめて金氏に対し『対話継続中は寧辺の核活動を全て停止しろ』と言っておくべきだった」と演習停止の代償をトランプ氏が求めなかった軽率さを強く危惧する。
 太田氏は「核の専門家」としてかつて六カ国協議や多くの被爆者を取材してきた経験から核戦争被害を今も背負っている日本という国が「北朝鮮核保有に日本も核武装する」と応じたら「核のタブー」が破られるだけでなく、核を持った被爆国が「核廃絶」を国際社会に訴えても説得力をなくす。「これまで被爆者が核攻撃の惨禍を世界で訴えてきたが、その国が核を持ってしまった。被曝者の話は何だったんだ」と有名無実化すると斬り捨てる。
 富澤暉元陸上幕僚長は「トランプ氏は『核の全廃、及び核開発の禁止』を徹底して要求し、北朝鮮側はその見返りとして『国連軍の解散と米軍の撤退』を要求し、米側は意外にもあっさりとそれを呑むのではないか。それでも日本は米朝韓各国に「それは許さない」と抗議する理屈も力も持ち合わせていない」と憂慮していた。米国は北朝鮮の「核放棄合意」を達成した今、長距離弾道ミサイル(ICBM)の除去以外、日本の国防など頭にない。
 富山大学の今村弘子教授は「北朝鮮の経済制裁は米国のマイク・ポンペオ国務長官が『北朝鮮の完全なる非核化まで緩和することはない』とした。一方2017年9月に韓国が「朝鮮半島の新経済地図」構想を描き、4.27南北首脳会談の際に韓国の文在寅氏が金正恩氏に構想情報を渡したという」と語る。さらに「米国と中国の貿易戦争が激化している今、トランプ氏と中国の双方が取引カードとして、北朝鮮問題を持ち出すこともあり得る。米国には日本や北朝鮮を『取引』の材料にさせないようにしなければならない。国連の経済制裁は解除されていなくても、中露韓はすでに経済協力に動き出している。国連の制裁解除案が提出されるまで経済制裁が破綻を来さぬよう持続できるかを見極めなければならない」と今村氏は指摘する。
 本書を通じて6.12後の軍縮外交情勢に闊達な議論を巻き起こすことを共編著者らは願っている。

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  • 柳澤 協二,太田 昌克,富澤 暉,今村 弘子

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