米朝首脳会談前に必読の書!「二面性」で道半ばな日本の核廃絶への道

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偽装の被爆国――核を捨てられない日本

 北朝鮮の「非核化」を巡り、初の米朝首脳会談が調整されている。著者は今年「ねじれる日本の核政策:米国の傘の下での二面性と一貫性」という英字論文を上梓した。本書はそれより以前、「核兵器禁止条約」を民間の力で勝ち取った舞台裏に迫り、米国のバラク・オバマ前大統領による「核なき世界」を目指してきた米核戦略から一転、ドナルド・トランプ現大統領による軍拡の道をひた走る現状に警鐘を鳴らす。その上で日本が核廃絶を目指す国民感情と相反するトランプ氏に追従して「日米核同盟の傘」を保持する安倍晋三首相の「二面性」核戦略を憂慮する。
 オバマ氏の前大統領だったジョージ・W・ブッシュ氏は北朝鮮とイラン、イラクを「悪の枢軸」とレッテル貼りし2003年にイラク戦争を開戦した。
 トランプ政権の軍拡とよく比較に出されるブッシュ政権でのNPR(核態勢の見直し)は①「核の三本柱(トライアッド)」を堅持しつつミサイル防衛や通常戦力の増強を図る②敵の地下施設を破壊する「強力地中貫通型核」や民間人被害の抑制を狙う「小型核」の開発を目指す③有事発生に備え、即時に増産可能な柔軟対応型の核兵器製造インフラ整備を進める。この三点だ。
 中国は表向き先制不使用(NFU)を堅持している。急迫有事の際、必要最小限の損害を敵に与えられる核戦力を保有する「最小限抑止」の軍事ドクトリンに依拠している。
 オバマ政権時、日本政府高官は北朝鮮の生物兵器と化学兵器の開発・保有に触れ、NFUに転じれば北朝鮮を抑止するための「核の脅し」が効かなくなるのではと疑念を呈した。日本政府内の「安保族」は米国の核戦略政策転換が「核の傘」に与える影響を懸念した。国連憲章や日本国憲法によって個別的自衛権があるが、被爆国という性格上、国民の反核感情が根強いにも拘らず、自衛権行使の手段として米国の核使用にも頼らざるを得ない。しかし、NFUでは原爆投下まで米国は核を使用しなくなる。「核の傘」を半ば絶対視する日本の安保政策決定者の本音が「偽装の被爆国」の内実を浮かび上がらせる。北朝鮮はICBMで米国本土が狙える。伝統的なデカップリングの議論になるが、米国にすれば『日韓を守るために、ロサンゼルスを犠牲にできるか』という話になる」(日本政府高官)
 著者は「沖縄核密約」をまとめた国際政治学者の若泉敬と日米外交の裏チャネルを繋いだ「核の賢人」と名高いモートン・ハルペリン氏に独占インタビュー。
 2010年4月にオバマ自身が下したNPRの最終策定時「唯一の目的」政策を相手の核攻撃を抑止するためだけに限定する政策の採用を見送った。これをハルペリン氏は「間違った判断だ」と批判したのだ。オバマ氏は北朝鮮に先んじて核兵器を使う選択肢をあえて温存した。「生物兵器や化学兵器による攻撃は無論、北朝鮮に核攻撃したら、韓国や日本に深刻な影響を及ぼすではないか」
 オバマ氏でさえこの斬られようなのだから、トランプ氏の軍拡など容赦ないであろう。
 核兵器禁止条約の交渉の場で日本という被爆国は背を向けた。①米国の核の傘無くしていかに条約を核廃絶に結びつけるか②北朝鮮・中国の安全保障なくして核軍縮は進められない③核軍縮に必要不可欠な核保有国と非核保有国の信頼醸成なくして「核廃絶」なし。
 条約推進派は「核兵器の非人道性」による環境への長期的悪影響が20億の人々に「核の飢餓」を訪れさせるリスクがあると「現代の核リスク」ゼロを力説した。
 今こそ民間が勝ち取った核兵器禁止条約の意義が試される時が来た。来たる米朝首脳会談を前に本書は核廃絶への深い造詣を与えてくれるだろう。

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