絶滅から逃れ生き残るのは, “強いもの” ではなく”環境変動に対応できたもの”

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なぜ男は女より多く産まれるのか: 絶滅回避の進化論 (ちくまプリマー新書)

生物進化の原理

1)絶滅回避:変化・変動する環境の中で絶滅を避ける

2)強い個体の選択:絶滅回避が保障されている中で競争相手を排除して生き抜く

従来の進化論は環境を一定に保ち、絶滅の恐れのない環境で議論されていた。
(1が満たされている前提で、2のみを議論していた:例>弱肉強食)
しかし、現実的には環境は大きく変動し、多くの生物は絶滅に追いやられる。
(例>東日本大震災のような大災害、恐竜の絶滅)
自然界で最も重要なものは他者を競走で排除することではなく、「生き残る」こと。

人間の性比はなぜ男55%、女45%なのか

人間絶滅の要因

  • 量的な要因:個体数が減少→繁殖ペアが減少→絶滅
  • 質的な要因:性比が極端に偏る(女性だけ、男性だけの集団ができる)→絶滅

一般的に『男子の死亡率は女子に比べ高いため男子が多く産まれる』と言われてきた。
著者らはこれを確率計算により証明。
集団の絶滅確率は死亡率に依存して上昇した。

もっとも、性比を調節しても環境変動が大きくなれば人類の絶滅の可能性は高まる。
絶滅回避には不確定な環境変動への適応が生物進化におけるもっとも重要な問題の1つ。

環境変動によって自然選択の最適化プロセスは変化する

環境変動が少ない時→好戦的で利己的な戦略が有利(独り占めした方が生存に有利)
環境変動が大きい時→平和で利他的な戦略が有利

これらの現象は自然界の共生で多数例がみられる。

絶滅を回避するための戦略

・特定の環境で適応度が高い(=強い)個体は、必ずしも進化に有利ではない。
・環境が長期的に変化した時、どの環境でも”そこそこ良い”(=環境適応度が極端に低くならない)個体の方が長期的にみると有利である。

環境の変化・変動が激しい時は、”環境の影響を受けない”(=成長率が変わらない)個体が最適個体となる。

平均点前後であれ、どの環境でも大きく失敗しないことが重要。

生物個体群としての絶滅回避策

いずれかの種が絶滅の危機にあるとき、競争は起きない。
多くの生物は種内・異種間で集団をなし、分業を行うことで絶滅を回避し生存し続けてきた。

例>
分業なし:生物の群れ
個体群内(同種内)での分業:階級性(カースト)、職業
異種間での分業:細胞コンソーシアム、腸内共生、植物群落

生物個体としての絶滅回避策

・高利益より安全を優先する行動
・一番避けるべきは絶滅につながる高リスク行動

「そこそこ」「負けない」戦略こそが進化の第一原理である。

感想

 2012年出版。著者は数理生態学の研究者。著者の研究テーマである素数ゼミ(周期ゼミ)やモンシロチョウなど、多くの生物の観察結果の数理解析から導き出された進化論です。
 本文は数学の計算もあり、苦手な方は辛いかもしれませんが、高校数学がそれなりにできた方なら十分楽しめると思います(まとめ者もそれなりにしかできませんでした)。
 本質的には科学書なのでしょうが、モテない男子の救済策から、最終的には投資の最適方法まで、話は多岐におよび科学書に苦手意識のある方も読みやすい内容です。
 前書として「強いものは生き残れないー環境から考える新しい進化論」(2009)という本を出されているそうです。そちらもぜひ読んでみたいです。

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