もはや他人ごとではない階級社会の悲惨

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週刊東洋経済 2018年4月14日号 [雑誌](連鎖する貧困)

◾️実態◾️

・日本の子供の貧困率は、2015年の調査では13.9%で、7人に1人が貧困の状態にある。
・親の経済力が、子供の学力に反映する。東大生の親の6割が、年収950万円を超えている。
・橋本健二(早稲田大教授)の研究によると、日本はすでに階級社会化しており、「資本家」「新中間階級」「旧中間階級」「労働者階級」「アンダークラス」の5階級が存在する。

【子ども食堂】

低価格で食事を提供する「子ども食堂」が広がりを見せているが、貧困対策としては限界がある。多くの食堂が、貧困家庭に限定せずに子供を受け入れており、その理由は、限定すると「子ども食堂に行く=貧困家庭の子」と見なされるのが嫌で、子供たちが寄り付かなくなるからだ。貧困家庭にピンポイントで届くような支援が必要だ。

【奨学金】

現在は、大学生の2人に1人が奨学金を利用している(2014年で51.3%)。これまで貸与型が主流だったのは、大学を卒業すれば安定した職業に就くことができ、返済が十分に可能だったからだ。ところが現在は、大卒でも非正規雇用になったり無職になったりする人が増え、雇用の劣化が進んだ。その結果、奨学金の返済が重い負担となっている。こうしたことを踏まえ、不十分ながら、日本学生支援機構の給付型奨学金制度が、この4月から始動した。

【公立小学校の格差】

首都圏の一部の地域には、中学受験者の多い公立小学校や伝統ある名門などへ入学させるため、私立高顔負けの富裕層が集まってくる。彼らは「公立小移民」と呼ばれる。港区の南山小学校では、平均世帯年収が1409万円となっている。アルマーニの標準服で有名になった東京・銀座の泰明小学校も人気校の一つだ。私立ではなく、公立の小学校が、今や格差の現場となっている。

【意欲の格差】

・親の収入だけでなく、その学歴によっても、子供の学業に差が出る。「両親ともに大卒の家庭」と「両親ともに非大卒の家庭」を比べると、子供が大学に進学するのを期待する親の割合は、前者の方が3倍近くも高かった。
・日本人の中には、貧困に対する「自己責任論」が根強い。「貧困になったのは努力しなかったからだ」という意見に対して、「そう思う」と回答した人が、アンダークラスでも4割もいる。自己責任論は、貧困の当事者までもが持っている。

◾️提言◾️

【中室牧子(慶應義塾大学准教授)】

幼児教育の無償化、高等教育の無償化のいずれにも疑問を呈する。問題はお金ではなく、意欲の格差であるという。つまり、格差の根源は、おカネではなく、親の社会経済的地位によって、子どもの学ぶ意欲や知的好奇心にバラツキが生まれている点なのだ。そうした親の意欲を変えるのは困難だ。
だから、格差の解消には、家庭への給付ではなく、教育の質を高めるという供給サイドへの投資が有効だと説く。
(一方、前川喜平は幼児教育無償化を「(家庭の状況の差の)是正策としてはありだと思う」と述べている。)

【橋本健二(早稲田大学人間科学学術院教授)】

アンダークラスの増加に歯止めをかけるために、「生活保護の整備(地方自治体の負担をなくし、資産チェックを緩和する)」と「労働時間の短縮(及びそれに伴う正規雇用の増加)」の二つの施策を提言。また最低賃金の引き上げを主張する。

【前川喜平(前文部科学事務次官)】

高校中退をなくすには、「数学の必修を廃止するのがいい」と主張。「数学は義務教育までで十分。論理的思考能力を養うために必要というが、それは国語の授業でやったらいい。」

感想

「意欲の格差」が生じている、という指摘がとても興味深かった。特に、自己責任論がアンダークラスの間にも存在する、という調査に驚いた。「どうせやっても無駄だ」という諦めが、底辺からの上昇を不可能にしているのだ。そして子供の教育への意欲を持たないことが、格差を連鎖させ、階級を固定させていく。それを踏まえると、中室さんのおっしゃるように、無差別の給付は効果がないと思う。

前川喜平さんと湯川誠さんの対談が掲載されているが、これはあまり面白くなかった。特に前川さんの発言は、まるで野党のような無責任さを感じさせ、提言としての現実性をまるで感じさせなかった。前川さんを登場させず、湯川さん1人にしっかりインタビューした方がいい記事になったのではないかと思う。
(2018年4月10日読了)

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