7万人の一生からわかったこと       ~生まれた社会階級と人生の関係~

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ライフ・プロジェクト

貧しく不利な境遇に生まれた子供はその逆境に打ち勝つことができるのか?
1946年から現在まで、5世代にわたって注意深く追跡調査が続いている
イギリスの出生コホート研究の経過とそこから明らかになった結果について書かれた本。

第1部
この研究は当時31歳のダグラスによって始められ、
最初のコホートメンバーはダグラス・ベビーと呼ばれた。
第2次世界大戦直後、イギリスは社会の上層と下層がはっきり分かれていて、
下層家庭の子供は生後2~3年で病気・死亡リスクが高く、成長も遅いことが明らかになった。
また、学業成績も劣り、格差は学年が進むにつれ広がっていた。
この不利な条件は親の関心で埋め合わせできる。
両親の離婚は死別よりも子どもに悪影響で、
離婚前の家庭で起こる出来事も子どもの学業や行動に影響している。
さらに大人になってからの病気、低賃金、対人関係の問題、精神障害などのリスクも高くなる。

第2部
ダグラス・ベビーも大人になり、追跡調査から分かったことは概ね次のようなこと。
社会階級の下層に生まれ・成長すると成人して高血圧になる傾向があった。
また、出生体重が低いと高血圧・心臓病になる傾向があった。
子宮内で十分に栄養を与えられない胎児は心血管系が弱くなると考えられ、
子宮内の条件が成長中の胎児に長期的影響を与えることは
「胎児プログラミング」と呼ばれている。
妊娠前半に飢えを経験した母の子どもは統合失調症リスクが高まっていた。
子どもを慢性疾患から救うには胎児が十分な栄養を摂取できるように
妊娠前から健康管理することが重要(胎児起源仮説)。
出生時体重の重い女児は乳がん発症リスクが高いことが分かった。
もちろん、病気のリスクは出生時あるいは生活習慣のどちらか一方にあるわけではない。
遺伝子は環境によって影響の強さを変えるボリュームのスイッチのようなもの。
例えば、太りやすい遺伝子は存在するが、その遺伝子の影響は20歳でピークに達し、
その後は生活習慣の影響が大きくなる。
家庭が貧しくても賢い子は生まれる。
が、しかし 裕福で鈍い子 の認知テストと比較してみると、10歳までに得点が逆転し、
その後どんどん拡大することが分かった…(ファインスタイン・グラフ)。
1958年生まれの裕福な家庭の子どもは 貧しい家庭の子どもよりも17.5%所得が多く、
1970年生まれの裕福な家庭の子どもは 貧しい家庭の子どもよりも25%所得が多かった。
つまり、社会的流動性が悪化して階層が固定化いることが明らかになった。
人生は歴史上のどの瞬間に生まれ、どんな社会環境にいるかによって制約されるといえる。
このような不利な状況に対する最強の緩衝材は親である。
親の子育てへの関心が子どもの不利な状況を埋め合わせることができる。
5歳の時に読み聞かせをしてもらい、
10歳の時に教育に熱心に関心を示してもらった子どもは
30歳の時に貧窮している可能性が低い、という結果がでた。
「早すぎることはない、遅すぎることはない」
親の意欲と支援があれば子どもの人生を好転させることができる。

第3章
不規則な睡眠と問題行動の関係も明らかになった。
不規則な睡眠は脳内時計を狂わせ、時差ぼけ状態をつくりだし、行動に影響を及ぼすのだ。
ダグラス・ベビーは65歳を超え死亡率と社会階級の関係も明らかになってきた。
最も貧しいグループは裕福なグループに比べて60%も死亡リスクが高かった。
現在は、認知症など脳の老化について研究が予定されている。

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  • ヘレン・ピアソン

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