坪内逍遥「当世書生気質」

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当世書生気質 一読三歎 第1号 [kindle版]

明治十年代の学生の生活風俗をリアルに描いた、新しい時代の青春実験小説

ストーリーの中心は、美男で秀才の学生「小町田粲爾(こまちださんじ)」と芸者「田の次」との恋愛問題。登場人物はほかに勤勉家の守山友芳、非凡な努力家の任那透一、だらしのない放蕩者の倉瀬蓮作や須河悌三郎、腕力はあるが男色家の桐山勉六など。勉強家・怠け者・硬派・軟派・遊び人といった、10人くらいの書生(大学生)たちが出てくる。

話は、東京王子の飛鳥山での、塾の運動会の場面から始まる。そして、近くの花街でその昔、兄妹のように交際していた娘が、いまは小町田の家の没落を救うために、芸子・他の次の名でお座敷に出ていることを、小町田は偶然にも知る。久しぶりに出会った二人は恋仲になってしまい、それが原因で小町田は学校から休学を命ぜられる。ついで、そのうちに田の次が、いまの学校で小町田が親友になった、守山の妹であったという意外な事実も分かってくるのだ。

そのほか、幕末の「戊辰の役」による江戸の騒乱のため、長いあいだ散り散りになっていた守山の親子兄妹が、維新後に無事再会することができて大団円となる。そんな江戸戯作小説の勧善懲悪的な話も出てくる。

しかし、この小説には、明治10年代(1877~1886)の学生の生活状態が、表面的とはいえ、一応リアルに描かれている。当時の学生の寄宿生活、牛肉屋での飲み会、矢場・寄席・温泉・遊郭・私娼窟での遊びなどが分かり、明治初期の若者の風俗を知るうえで、たいへん面白い。

ちなみに、題名にある「一読三歎」とは、一度読むと三度感激するという意味。

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