あったかくてちょっとだけせつない、五感と記憶を刺激する俳句集

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団十郎とおはぎのゐる家。

興味深そうにてしてしと叩く
硝子の向こうで優雅にひらめく赤と黒。
まるい瞳には、いったいどう映っているのだろう。
(「うちの猫は恋知らぬまゝ金魚見る」)

おおさむいさむい、布団をめくった瞬間弾丸が飛んでくる。
まさに座ろうとしたそこにすっぽりおさまり
こちらをじろりと睨めつけるそれは
梃子でも動いてやるもんか、と鼻を鳴らした。
(「立冬や割り込む猫のくそぢから」)

ため息をひとつ、両手を更に奥へ突っ込み
ずるん、と引っ張れば
緩みきった顔でされるがままの、先客の先客───
(「やはらかくなつて出てくる炬燵猫」)

うとうと、うつらうつら。
隣で丸まる彼女と一緒にゆったり舟を漕いでいると
かさり、と庭の向こうから音がする。
おや、君も私の目を借りに来たのかい?
彼女の反対側に落ち着いた彼は返事代わりに
くあ、とひとつあくびをよこす。
(「猫の道ぬけて猫来る目借時」)

夏から秋へ、冬と春。
平凡な日常を切り取って、まるめて、のばして、磨いて
ほんわかしてて くすぐったくて ちょっとだけ真剣で…

団十郎とおはぎのいる家はいつも、やわらかな刺激に満ちている。

身近な日常にきらめく一瞬をしたためた全90句を収録。
著者自ら描いたイラストにも注目。

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