子どもの心を支える土台。それは親との間で結ばれる愛着である!

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愛着障害~子ども時代を引きずる人々~ (光文社新書)

ひたむきな愛情をかけて育てられた子どもが、大人になって親を回想するとき、その言葉には深い感謝と肯定感があふれる。それは、親が誰よりも自分を肯定し、支持してくれたという、ありがたい思いである。でも、不幸にして十分な愛情を注がれなかったとしたら、その子どもはどうなってしまうのか?大人になってどのような苦難に見舞われるのか?

本書は作家で精神科医の岡田尊司氏がいわゆる「愛着の問題(愛着障害)」について解説した本である。著者によれば特別に問題のありそうにないふつうの家庭で育った子どもでも、三分の一が愛着の問題を示し、大人のおよそ三分の一にも同様の問題が認められるという。愛着障害は誰にとっても他人事ではなく、本書は人生をもっと生きやすく実り豊かにするヒントを得てほしい、と一般向けにわかりやすい文体で書かれている。

第1章は私たち大人の愛着スタイルについて述べられている。不安定な愛着スタイルの人は、拒絶されるのではないかと不安になって、助けを求めることをためらったり、最初から助けを求めようとしなかったりする。あるいは、助けを求めても、求め方がぎこちないため、相手を苛立たせてしまったり、肝心なことを切りだせなかったりして、結局、相手から助力を得られにくい。こうした愛着スタイルは、母親との関わりを出発点として、その人にとって重要な他者との関係のなかで、長い年月をかけて培われていく。ここでのポイントは愛着が、ある特定の存在(愛着対象)に対する、特別な結びつきということである。これを愛着の絆という。つまり、特定の人との安定した関係(多くは母親だが、母親でなくてはいけないわけではない)が重要なのであり、複数の人が入れ替わり立ち代わりある期間ずつ愛情を注いだり、特定の人でもその人との関係が不安定だと、愛着の問題が起きやすくなるという。第2章では愛着障害が生まれる要因と背景についてさらに詳細に扱われる。

第3章では、愛着障害の特性と病理をより深く掘り下げて、親との関係においては確執を抱えるか、過度に従順になるか、あるいはその両方が両価的に混在するパターンが多いと述べられる。親以外とでは親密な関係が育ちにくい場合もあれば、たちまち親密な関係になるものの持続性がなく、すぐに冷めてしまったり、別れてしまうという場合もある。いずれにしろ、特定の人との信頼関係や愛情が長く維持されにくいという点が愛着障害の人には共通しているとする。ほどよい距離感がとれないのである。その背景には愛されない自分という感覚が強く、他者からの評価に傷つきやすく、ネガティブな反応も起こしやすい特性がある。ゆえにうつ、心身症、怒りの問題、依存症にも陥りやすい。他者に頼れないことで孤立しやすく、発達の問題も抱えやすい。自力で対処しようと極限まで我慢し、結果的に潰れてしまうということが起きやすいのである。

第4章は愛着スタイルの見分け方、第5章は愛着スタイルの違いの詳細、第6章は愛着障害の克服についてである。克服においてはやはり同じように愛着障害を克服した人、あるいは克服途上にある人が大切であるという。また、愛着障害を抱えた人が良くなっていく過程において、その傷が深いほど、自分を支えてくれる人に甘えようとする一方で、反抗的になったり困らせたりするのが目立つ時期がある。この時期が、回復への過程において、もっとも重要な局面だと著者はいう。支える側が反抗することを許容し、受け止め、それに動揺せず、その気持ちを認めてやることが大事であるようだ。

感想

本書に出てくる愛着障害を抱えた人たちは、自己評価が低かったり、拒絶や見捨てられることを過度に恐れたり、べったりとした依存関係を好み、相手の愛情が足らないと手厳しい反応を来すなど、私たちのよく知る隣人です。そして、私たちがよく頭を悩ませる知人でもあり、部下でもあり、上司でもあったりします。対人関係がうまくいかないどうする?といったハウツー本では得られない、深い人間理解が得られるともに、対人関係上のよくある悩みについて明日への示唆がもらえる本です。

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