うつ病の当事者の言葉にできない心の叫びを解き明かす!

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うつ病の人の気持ちがわかる本 (こころライブラリーイラスト版)

当事者はうつ病という暗闇を一人で進まねばならないような気持ちになる。それはうつ病の症状じたいがつらいのはもちろんのこと、それが周囲にわかってもらえないという二重の苦しみを抱えるからであるという。うつ病の人の気持ちを少しでも理解しやすいようにと本書は作られている。

本書はNPO法人コンボが精神科医の大野裕氏の協力のもと、うつ病の人の苦しさをうつ病の人自身の言葉で語ってもらってまとめた、という力作である。見開き2ページで一つのテーマについて扱われ、そのテーマに関する当事者の肉声、体験談が随所に紹介されている。うつ病の人の家族が主な読者と想定されているようで、専門用語はほぼ無く、イラストや図表も多い。大野氏の的確な解説のもと、うつ病の人の気持ちと家族がすべき見守りについて全1時間ほどで読めるようになっている。

第1章、第2章はうつ病の人の気持ちについて扱い、それを踏まえて第3章は家庭での望ましい見守りについて具体的に触れている。第4章、第5章は回復への道を歩みだしたときに活用するとよい治療や資源について、である。

第1章、第2章はうつ病の人の気持ちについてであり、うつ病の人は自分が何者かわからなくなるという。つまり、最初はうつ病だと認めたくない気持ちと、診断されてホッとした気持ちなどが入り混じるが、しばらくするとひとりの患者でしかない自分に気づく。自宅と病院を行き来する毎日になると、社会との接点がなくなる。病院で名前を呼ばれるしか、自分を呼んでくれる声はない。いままで会社員、学生などと呼ばれていたのは、社会における自分の「位置」だったことに気づく。それはやがて「自分は何者でもない」というさびしさや焦りに変わっていく。

医師から「休め」と言われるが、本人には「具体的に」「どうすれば」休んだことになるのかもわからない。それは、うつ病になるまでは休むことは遊ぶことだったから。余暇は無駄にしてはいけないと、しっかり「活用」することが休みであった。しかし、そもそも「具体的に」「どうすれば」と考えることじたい、休むということから離れている。うつ病になると、実際には何もしないでボーッとしていることしかできない。やがて、徐々に、この過ごし方が「休む」ことだとわかってくる。

第3章は家庭での望ましい見守りについてであり、避けられがちな自殺についての対策も本書ではしっかり書かれている。ポイントは目を離さず「温かい無視」をすること。自殺は心配だが、家族が四六時中そばについているのは、お互いに負担になる。「温かい無視」は少し離れたところから、今どのようなようすか、なにをしているかを、視界の端にとらえておくような感じである。

本人から家族へのお願いとして、
・ 怪しげな治療法を勧めないで
・ 薬への不安をかきたてないで
・ 家族どうしで責め合わないで
・ 重大な決定をさせないで
・ 腫れ物にさわるようにしないで
なども紹介され、それぞれに
・ 怪しげな宗教の祈祷師をよんだりしないでほしい
・ 「この薬はひどい副作用があると新聞に出ていたよ、飲んでも大丈夫か」と言われても、不安になるだけ
・ 目の前で、病気になった原因を家族がお互いになすりつけあってけんかをしないでほしい。自分が生きているからいけないんだと、いたたまれなくなる。
といった生々しい当事者のホンネも載せられている。

感想

本書の著者の一人NPO法人コンボは、こころの病気がある人たちが地域社会で主体的に生きていくことができる仕組みづくりを目指している団体です。特に力を入れているのが、こころの回復力を高めるコツがわかる機関紙メンタルヘルスマガジン「こころの元気+」です。

「こころの元気+」同様、この本にも多くの人の気持ちやメッセージが詰まっており、紡がれているその言葉ひとつひとつに、うつ病を生きる者としての深みや広がりを感じることができます。うつ病の当事者はもちろん、ご家族や支援者にとっても心に残る一冊となると思いました。

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