ニーチェのツァラトゥストラの解説まとめ

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ツァラトゥストラ (中公文庫)

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(1844~1900)
・実存哲学やポスト構造主義などに多大の影響を与えた、現代思想の源流となるドイツの哲学者。

神の死=ニヒリズムと超人思想

 ニーチェは言う、「わたしはこの書『ツァラトゥストラ』で、これまで人類に贈られた最大の贈り物をした」。「この書の言葉の一々にいつか一度深く傷つき、いつか一度深く狂喜した者でなければ、わたしはこの書を知っている者とはみなさない」。

 ルター訳の聖書に範をとり、物語形式となっているため、哲学書のなかでは馴染みやすい部類である。一般にニーチェは、鋭い言語感覚を駆使して、詩的な文章を書くということもあって、フランスのパスカルなどと同様、研究者も哲学畑だけでなく、文学の領域にもまたがっている。

 「ツァラトゥストラ」とは古代ペルシアにおけるゾロアスター教の教祖のドイツ語名である。ニーチェがゾロアスターを主人公にすえた理由は、ゾロアスターこそ史上初めて、「善悪を、つまり道徳を、世界を支配する形而上学的原理として設定した者」だったからである。そして、道徳の実相についてだれよりも経験を積んだ者として、逆に、道徳の虚妄をいち早く見抜くはずの、また見抜くべき者だからである。「まことに歴史の全経過は、いわゆる『道徳的世界秩序』という命題の実験的反駁にほかならない」からである。

 本書のテーマは、これまで二千数百年にわたってヨーロッパの精神的支柱として君臨してきたプラトン的・キリスト教的(「キリスト教とは『民衆』向けのプラトニズムである」)道徳の虚妄を積極的に暴いて突き崩してゆくとともに、そうした従来の価値観が崩壊したニヒリズムの時代にあって、「生きることの意味」をいかにして探求し創造していくか、にある。このテーマを追求するにあたって、ニーチェは3つのキーワードを挙げる。
それは

「神の死」
「超人」
「等しきものの永劫回帰」

である。まず「神の死」によってニーチェは、「最高の価値の価値喪失」としてのニヒリズムを言い当てようとする。神によって定められたとされる、善と悪、真理と虚偽といった二元論的世界観は、もはや通用しない。
なにより、神それ自身が、近世以来の近代科学の勃興によって、信ずるに足らないものになってしまった。現代人はいまや、みずからが依って立つべき世界観・価値観を喪失してしまった。こうした神なき時代における「生きることの意味」の核として打ち出されるのが超人である。超人は「大地の意味」であると定義される。「大地」とは、神なき存在全体をいう。大地にはそれ自体として、はじめから意味が備わっているわけではない。大地を、すなわち、この世における人間の生を、神などの形而上学的原理なしに、有意味化する存在、それが超人である。「超人」とは、「意味」そのものに関する考え方を180度転換することを要求する思想である。意味とは与えられるものではない、それはつねに創造されるべきものだ、というのがその内容である。なら、いかにしてこの意味創造は可能となるのか。そこに登場するのが、「等しきものの永劫回帰」の思想である。

 世界は、現在あるがままとまったく同じに、また同じ順序で過去にも未来にも無限に繰り返されてきたし、繰り返されるであろう、というこの思想は、意味付与の絶対的不可能性を言い表している。なぜなら、世界には絶対的起源も目的=終末も存在しない以上、世界の運行には特権的地点となるところは端的に認められないことになるからである。みずからの生に意味付与しようにも、人間にはもはやいかなる手がかりもない。こうしてぎりぎりのところまで追いつめられたところで初めて、意味付与から意味創造への転換が可能となる。だから、「永劫回帰」思想は、生の絶望的な不可能性にして最大の好機をなすものとして、ニヒリズムの最も極端な形式」とも「肯定の最高の定式」とも称されるのである。本書全篇が、ツァラトゥストラの「永劫回帰」に対する戦慄とその克服を廻って、展開されるのも、そのゆえである。

 ニーチェは西洋の伝統的思想をその根幹において批判しようとした。その影響は、ハイデガー、ヤスパースの実存思想や現代フランスのポスト構造主義などにとって、決定的である。

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