志賀直哉「暗夜行路」

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暗夜行路 (新潮文庫)

夜よりも暗く、深いものだった主人公の心の闇

主人公の時任謙作は、6歳で母親と死別すると、その後は祖父に引きとられて育った。彼自身の幼い頃の記憶では、母親には愛されていたものの、父親には疎まれていたような印象があった。そうした不安を抱えて育った謙作は、成人後には放蕩生活をはじめる。また、祖父の妾で、謙作には母親代わりでもあったお栄に対して、彼は異性を感じるようになる。そして、その気持ちを払拭しようと、謙作は一人で尾道に行って小説を書くことに専念しようとする。

ところが、それもままならず、結局は最も親しい女性であるお栄への求婚を決意して実行に移すが、お栄は謙作の申し出を承諾しなかった。また、謙作からお栄への求婚の相談を受けた謙作の兄は、謙作に重大な秘密を知らせるのであった。謙作の本当の父親が実は祖父であるという秘密である。彼は祖父と母との過ちから生まれた不義の子だったのであり、それゆえに、父は幼い彼を疎んじていたのであった。そして、この秘密を知った謙作は平静を保つことに努めるが、再び乱れた生活を送るようになってしまう。

その後、謙作は京都に居を移す。そして、かの地の古寺や古美術などによっていくらか心を慰められた謙作は、直子という女性と結婚する。直子というのは「鳥毛立屏風の美人」と形容されるような、大柄で健康的な太り気味の女性であった。大学病院で診察を受ける元代議士の伯父に付き添って敦賀から上洛していた彼女は、そこで健作に見初められたのであった。

結婚してほどなく、時任夫妻は最初の子供をもうける。が、この子供は夭逝してしまう。幼い子供を亡くしたことは、夫婦には大きな痛手であった。しかも謙作が留守にしていた間に、直子は幼なじみで従兄の要と一夜の間違いを犯してしまう。この出来事の後、謙作はなかなか妻を許す気にはなれず、二人目の子供ができたものの、夫婦は結婚生活の危機を迎えることになる。健作にしてみれば、母親やお栄に続き、またもや女性に裏切られたことになるのだ。

人生に懊悩する謙作は、気持ちを鎮めるために大山に向かった。しかし、体調の悪さをおして登山を強行した謙作は、途中で倒れて身動きがとれなくなってしまう。その最中に自分の心身が自然に融け込んでいくような陶酔を覚えた彼は、「永遠に通じる路」を探りあてたと感じた。彼はようやく安らぎを得たのである。

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