谷崎潤一郎「痴人の愛」

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痴人の愛 (新潮文庫)

悪女の魅力にとり憑かれ、身を滅ぼす愚か者の物語

私は、田舎の富農の家に生まれ、現在は東京の電気会社で技師をしている。会社では君子の渾名がつくほどの堅物で、女遊びもしたことがない。

そんな私があるカフェで女給をする15歳のナオミに出会ったのは28歳の時だった。西洋風の顔立ちや、利口そうな雰囲気を気に入った私は、ナオミを自宅に引き取り立派で教養ある婦人に育て、ゆくゆくは妻にしようと大それたことを思いつく。ナオミの実家は貧乏な売春宿で、私がナオミを引き取りたいと申し出るとあっさり了承する。

私は大森に文化住宅を見つけ、ナオミと暮らし始める。私はナオミに英語と音楽を習わせるが、その一方で毎日猫なで声で呼びかけ、夜にはお風呂に入れて体を洗うほどの可愛がりぶりである。おまけにナオミの成長ぶりを日記帳に記録するほどだ。

ナオミは私の思惑とは裏腹に、次第に贅沢でズボラで我儘で奔放な本性を露にしだす。ろくに掃除も料理もしない。食事はすべて外食か店屋物で、しかも舌が肥えていて高級料理しか口に合わない。

ある日、ナオミは私に一緒に社交ダンスを習おうと言い出す。ダンスに夢中になりだすと、ナオミの行動はますます奔放になり、自然と周りには怪しげな男友達が大勢まとわりつくようになっていた。中でも浜田と熊谷という2人の学生とは親しげで、頻繁に家に出入りするようになる。ある晩などは大雨で帰れなくなった2人と同室で雑魚寝して夜を明かすことになった。ナオミは夜通し騒いですごす。

万事そんなふうだから、ナオミに悪い噂が立つのも時間の問題である。ナオミが慶応の学生を荒らし回っているという噂を耳にし、次第に疑心暗鬼の塊と化していく。

その頃ナオミの希望で鎌倉で暮らしはじめたが、実はこの引越しにはナオミの魂胆があった。借りた家の近くに熊谷の叔父の別荘があり、ナオミは毎日のようにそこに入りびたり乱痴気騒ぎを繰り返していたのだ。

そんな私に更にショックな事が起こる。久しぶりに大森の家に帰るとそこには浜田がいるではないか。問いただすと、ここでナオミと密会する予定だったこと、前から関係があること、現在のナオミは熊谷と深い仲にあり、自分もナオミに捨てられた被害者だということを白状する。このことがあってから、私は会社を無断欠勤しては探偵のようにつけ回すようになり、ついに熊谷との密会の現場を押さえてしまう。

逆上した私はナオミを家から追い出してしまう。ところがいざナオミがいなくなると、私はたちまち後悔の念にとらわれてしまう。そこで浅草の実家を訪ねてみるが、まったく姿を見せていないという返事。困った私は浜田に頼んでナオミの行方を調べてもらう。浜田によるとナオミはしばらくあちこちを泊まり歩いていたが、最近は横浜の外国人の家に居ついているということだった。

折りしも実母の訃報が届き、私は会社を辞めて田舎に引っ込む決意をする。そんなある日、ナオミが家に毎日のように来るようになる。困ったのは盛んに私を誘惑することだった。私のいる前でわざと着替えたり、下着を滑り落として慌てて隠して見せたりと、たまったものではない。私の劣情は爆発寸前の状態となるが、ナオミは指一本触れさせてくれないのだ。

こんな調子でじらされた末のある晩、風呂上りのナオミが私を呼んで顔や体の毛を剃ってくれと言う。脇の毛を剃ってくれと言われたとたん、急にムラムラを抑えきれなくなり、遂にナオミのあらゆる要求を受け入れて元の関係になることを約束させられる。

こうして私はナオミに奴隷のように仕える身となってしまうのである。

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