太宰治「斜陽」

243viewspurinpurin

このエントリーをはてなブックマークに追加
斜陽 [kindle版]

没落貴族の運命を描き「斜陽族」の流行語を生んだ大ヒット作

日本にもかつて存在した階級制度。それに守られ「貴族」としての豊かな生活を享受してきた一家庭が、父の死、戦後の制度崩壊によって没落していく。

住み慣れた家を手放し、母と二人で伊豆の山荘に移り住む主人公のかず子。「ほんものの貴婦人の最後の一人」と敬愛する母を悩ませないよう、慣れない畑仕事に従事したり、着物や宝石を売ったりして何とか生活をつないでいる。そこに戦地で阿片中毒になり音信不通だった弟の直治が帰ってきた。直治の薬物中毒による借金まで押し付けられることになり、さらに家の中は荒れていく。

かず子は30歳、以前に弟が取り巻きをしていた作家、上原二郎と口づけを交わしたという「ひめごと」を胸のうちに抱えていた。「おひめさま」のようにおっとりと育てられたかず子は、生活を支えるために「だんだん粗野な下品な女になっていく」ことに自分で耐えられなくなっていく。

そんな毎日の中で、かず子は「上原二郎の子を生む」という目標、彼女にとっての「革命」を決意する。かず子は伊豆の山荘から上原に愛の手紙を書き送る。「私は、いま、お母さまや弟に、はっきり宣言したいのです。私が前から、或るお方に恋をしていて、私は将来そのお方の愛人として暮すつもりだという事を、はっきり言ってしまいたいのです」。

3通に及ぶかず子の手紙は、古い道徳への挑戦とかず子自身の良心の間で揺れつつも、上原の愛人となり子を生むことを「革命」と位置づけて熱っぽく綴られていた。しかし、上原からの返事はなかった。

やがて、母が病をこじらせ「美しく悲しく生涯を終る」。葬儀を済ませた後、かず子は「戦闘、開始」と、自分の恋と革命をなし遂げるため、上原を訪ねる。作家である上原二郎は、かず子が6年間思い続けたイメージから遠くやつれ、「死ぬ気で飲んでいる」という言葉どおり、荒れた生活を送っていた。かず子は失望しつつも、上原と結ばれる。その朝、弟の直治が「僕は、貴族です」と遺書を残して自殺していた。弟の放蕩な生活は、貴族出身の自分の居場所が世間にないところからくる苦悩が原因だったこと、そして上原の妻への秘めた思慕が、その遺書には記されていた。

やがて望みどおりに上原の子をみごもったかず子は、手紙の中で「こいしい人の子を生み、育てることが、私の道徳革命の完成」と高らかに宣言するのだった。

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く