森鴎外「舞姫」

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舞姫    集英社文庫

格調高い文語体で綴られたロマン溢れる悲恋の物語

小説は語り手である太田豊太郎が、欧州からの帰途の船中で、回想録を執筆するというシーンから始まっている。

厳しい家庭に育った豊太郎は、子供の頃から学問を怠ったことはなく、学校では常に一番の優等生。大学を出た後は某省の官職に就き、上司のおぼえめでたくして、遂にドイツ留学の命を受ける栄養にあずかった。

ベルリンの都は見るものすべてが華やかだったが、まじめな豊太郎はひたすら役所の仕事に励むと同時に、大学に籍を置き政治学の講義を受ける毎日。こんな調子であるうえに、ひどく人付き合いが悪いので、留学生仲間の中に豊太郎をあざけったり妬んだりする連中が出てきても不思議ではなかった。

そんなある日、豊太郎は散歩をしていてエリスという名の美しい少女に出会う。泣いているので訳を訊ねると、父の葬儀を行う金がなく、葬儀代の肩代わりをする代償として彼女の雇い主であるヴィクトリア座の座頭がひどいことを強要してくるらしい。しかも実の母親が、座頭の言うことに従わないからといって彼女をぶつという。ひどい話である。そこで豊太郎はポンとポケットの銀貨を差し出す。それでも足りないと見るや時計まで置いてくる。

これをきっかけに豊太郎とエリスは親しく付き合うようになる。エリスは貧しい踊り子だが、もともと読書好きで、二人は師弟のような関係を築くようになる。

ところが、そんな豊太郎とエリスの交際を、上司に告げ口する者があった。豊太郎は免官になり、給料も学費も失ってしまう。窮地に陥った豊太郎を助けてくれたのは、親友の相沢謙吉だった。彼は日本で豊太郎の免官を知ると、彼のために新聞社に相談し、通信員の仕事を世話してくれたのだ。豊太郎はエリスの家に居候し、彼女と母と3人で、貧しいながらも楽しい生活を送る。

明治21年の冬、エリスの体調に変化が起きた。なんと悪阻らしい。豊太郎はそれを知って不安に襲われる。ちょうどそんなところへ、相沢から手紙が届く。現在、天方大臣に従ってベルリンに来ているが、大臣が豊太郎に会いたがっているという。翌日、ホテルに会いに行くと、大臣からドイツ語の翻訳の仕事を依頼される。また久しぶりに再開した相沢からは、将来を考えてエリスと別れるように諄諄と諭される。豊太郎はその後もたびたび大臣に呼ばれ、徐々に信頼を得ていく。大臣のロシア行きにも通訳として随行し、職務をつつがなくこなす。

さて、ロシア行きから帰って2、3日のことである。大臣は豊太郎を呼び、君の学識は国のために大いに役立つに違いない、一緒に東京に帰らないかというのだった。これに対し優柔不断な豊太郎はついつい「承りました」と答えてしまうのである。その帰途、豊太郎はエリスにどう言えばいいのかと錯乱状態になり、あちこちをさまよったあげく、ボロボロの状態で言えに帰り、気を失ってしまう。

豊太郎が正気を取り戻したのは数週間後だった。目が覚めると、エリスはすっかり別人と化していた。エリスは相沢から豊太郎の帰国の話を聞き、そのショックで完全に気がふれてしまったのである。豊太郎は、エリスの母に十分に生計を立てられるだけの金を渡す。

そうして小説は次のようにしめくくられる。
「ああ、相沢謙吉がごとき良友は世にまた得たがるべし。されどわが脳裡に一点の彼を憎むこころきょうまでも残れりけり」。

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