脳内の生化学的状態の操作が可能となった際の人間の幸せとは?

303viewsslainteslainte

このエントリーをはてなブックマークに追加
サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

トラが人間を狩るからといって,人間がトラよりも劣るわけではないように
狩猟採集民にとって,動植物種がサピエンスより劣るとは考えていなかった.

農業革命に伴う宗教革命によって,動植物種は対等の生命から,資産へと格下げされた.
さらに,産業革命後,何百億もの家畜が,機械化された製造ラインの一部と化して暮らし,
毎年,そのうち500億が殺される.
工業化された畜産業は,労働力の余剰を生み,都市の工場やオフィスで働く人口を増加させた.
人類史上初めて,供給が需要を追い越し始めた.
そして,消費,贅沢が目指すべき好ましい事に変わる.
今までは,貴族階級が派手に散財し,農民は質素に暮らした.
今は,豊かな人々が細心の注意を払って資産や投資を管理し,庶民は本当は必要でもない自動車やテレビを買って借金に陥る.

従来,人間は,社会構造を柔軟性の無い永遠の存在と見なす傾向があった.
過去二世紀の間に,社会秩序はダイナミックで順応可能なものになった.
人間の活動と産業で消費されるエネルギーは,地球が太陽からわずか90分で受け取る量でしかない.資源が不足するよりも知識や技術が不足しているにすぎない.

近代を評価する際に,つい二十一世紀の西洋中産階級の視点にたちたくなる.
だが,十九世紀の炭坑夫や,アヘン中毒に陥った中国人,さらにはタスマニアのアボリジニ
の視点を忘れてはならない.

歴史には,人類の境遇が改善されるという証拠は無い.
昔の人は今よりも不潔で悪臭で不快だというのは,
今の人の感じ方であって,昔の人はそんなことは気にもとめない.
万事がこのように言え,今が昔より優れているとは言えない.
ただ,新生児の死亡率低下,飢饉,疫病,戦争を減らしたことに関しては,進歩と言える.
しかし,他の動物種の境遇はかつてない速さで悪化している.

家族やコミュニティは,富や健康よりも幸福に大きな影響を及ぼすようだ.
過去二世紀の物質面における劇的な状況改善は,家族やコミュニティの崩壊で
相殺された可能性がある.

幸せは脳内のニューロンが分泌するセロトニンによるという考えは,
事実とされているが,実は,幸せと快感は等しいという生物学的前提に基づいたものである.
この前提に基づけば,生まれつきセロトニンの分泌量が少なくできている人は
幸せが少ない事になる.
しかし,今,ついに,脳内の生化学的状態の操作が可能になり,幸せを操作可能となった.
科学革命はただの歴史的革命でなく,生物学的革命になる可能性がある.

幸せとはなんなのか?
これは,私たちは何になりたいのか,どうなりたいのかではなく
私たちは何を望みたいのか,ということかもしれない.
と著者は締めくくる.

テレビCMを見て,欲しいものを操作され
手に入れば優越感と幸福を感じる.
幸せな家庭を築いて,愛する子供を育てる喜びを脳のセロトニンその他の化学物質の濃度分布で感じて,満たされていると感じる.
今,我々はこうした感情を分子生物学や遺伝子工学で操作できる可能性がある.
未来には操作できるようになるのだろう.

一体,自由意志とはなんなのだろうか?

感想

こうした議論は,本書以外にも多く見られるが
サピエンスの全史を概観して語られるのは,これ特有の説得力がある.

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く