多くの人類のなかで,ホモ•サピエンスのみがなぜ繁栄したのか

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サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

ホモ•エレガンスやらホモ•エレクトス,ホモ•ルドルフェンシス,ホモ•ネアンデルターレンシスなどの多くの人類のなかで,ホモ•サピエンスのみがなぜ繁栄したのか.それは,言語による他者との協力のおかげと著者は説く.
伝説や神話,宗教,貨幣といった虚構によって,みず知らずの何万というサピエンスが互いに協力することができた.これによって一匹ではサルと大差の無い能力のサピエンスが,電気,ガス,水道の整った環境で,コンビニで好きな物を買い,店で好きなものを食べ,車や電車で株式会社に通い月給を稼ぎ,家の清潔な風呂にゆっくり浸かって,バカンスに海外旅行を楽しめるような存在となったのだ.

興味深かった点をいくつか挙げると,

人類全体としての知の総量は古代に勝るが,個人では,古代の狩猟採集民の方が知識と技能の点で遥かに多くの事を知っている.その証拠に脳の大きさは縮小している(大きさがすなわち賢さなのかは疑問の余地があるが).

農業革命によって,ヒトは過酷な労働を余儀なくされ,余暇は減り,腰痛や家畜由来の感染症で不健康になったが,食料の総量は増し,狩猟採集にとって重荷になる乳幼児の間引きは減り,女性は毎年子を産むようになり,人口は増加し,個人の生活を苦しくする農耕からもはや手を引けなくなった.定住することで,我が家への愛着と隣人との分離が生まれ自己中心的となり,贅沢品は必需品となり,何年も先の事を心配するようになり,未来への不安は新たな義務を生じさせ,サピエンスは個人としてはより不幸になり,種としては繁栄した.

万人は平等であり,生命,自由,幸福を追求する権利があるというアメリカの独立宣言は,客観的な正当性はないという点でハンムラビ法典と同様の虚構である.
その人の欲望は誕生時から社会の秩序の中で支配的な神話によって形作られる.
(これらの事実は当然のことと思われるが,筆者がショッキングなこととして書いているのがショッキングだった)

複雑な人間社会は想像上のヒエラルキーと不正な差別が必要.

宗教は特定のものを信じるように求めるが,貨幣は他の人が特定のものを信じている事を信じるように求める.このため貨幣は文化間の溝を埋め,宗教や性別,人種,年齢による差別無しに信頼される.

数百年でなく数千年のスパンで歴史を眺めれば,人類は統一(1つの帝国)に向っている事は明らかである.

などがある.どれも示唆に富むもので興味深い.

難点を1つ挙げると
生物学は可能にし,文化は禁じる,この論調で同性愛など文化で禁じるものに不自然なものなど本来無いと論じていながら,数学で表した物を不自然なものとして語るのに狭量な素養が透けて見える(実際,本書に出る数式はでたらめであり専門家のチェックが必要である)

感想

意欲的で素晴らしい本だと思う.中,高校生に(本なので,懐疑を忘れずに読む事は当然として)勧められる.

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