兎男のなかの兎男‼︎

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ジョニー・ザ・ラビット (双葉文庫)

あらすじ

マフィアのドンに飼われていた兎のジョニー。ある時、飼い主であるドンが殺された。生き残ったジョニーは犯人に敵討ちすることを夢見ながら探偵事務所を開いていた。ある時、1人の兎女が、ある兎男を探して欲しいとやってきた。よくある依頼だと思っていたが、探しているうちにドンの事件に繋がって行く。ジョニーはちっぽけな兎である無力さに抗いながら、敵討ちへと踏み出す。

印象に残った文章

愛ってのは欠乏から生まれるもんだ

そしてこのジョニーラビッドはもっとちっぽけだ。だからこそ、みんな必死で何かにこだわっていたのだ。現実から逃げてしまわないように、一生懸命足を踏ん張っていたのだ。そう、自分を好きでいるために。

あきらめは安らぎ

みんな、ほんとの自分と理想の自分に引き裂かれてしまってるんです。

自己不憫の心地よさに我を忘れそうになった。洗いざらいぶちまけたくてたまらなかった。ずっと誰かに自分を肯定してもらいたかったのだ。大丈夫と言ってもらいたかった。そうすれば、どれほど救われることだろう。ひとりぼっちじゃないと知ることは、どんなにすばらしいだろう。

人間は自ら死を呼び寄せることができるってね。それこそが人間と他の動物の決定的な違いなんです。死に近づける者だけが万物の頂点に君臨できるんです。

俺たちの感情の根っこにあるのは無関心と満腹感と空腹感だけさ

真実をないがしろにするわけじゃないけど、時には嘘が真実への近道になることもある。そういう嘘は断じてもう嘘じゃないのだ。

してみるに、哲学とは胃袋の問題の後にやってくるのだろう

感想

この本では、兎を本能に従う動物的な存在、人間を本能を理性で抑えた感情的な存在として象徴されているように感じた。兎でありながら人間に可愛がられ人間的な要素を持った主人公のジョニーは、兎と人間の間で揺れ動き、常に苦悩している。自分というものはどういうものか、常に悩み苦しみ続ける。
飼い主への義憤に燃え敵討ちをしようとする中、それでも自分はちっぽけな兎であるという無力感に打ちひしがれる。そんな苦悩に悶える姿が、「足をトントンする」と兎らしく表現されている。その姿は想像すると何とも愛らしく、作者のユーモアを大いに感じた。
本能を抑えた人間にだけ許された、 愛、寂しさ、孤独という「感情」は当たり前のものではない。感情によって得られたもの、失ったものを考えさせられる。人間であること、自分であることについて考えさせられる作品だった。

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