現実と理想のギャップ、それでもおれは屈しない。それこそロッカーの熱い魂

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イッツ・オンリー・ロックンロール (光文社文庫)

あらすじ

アルバイトで日々を食いつなぎながらバンド活動をしている売れないロッカー、34歳、青木満。軽度の自閉症であるドラマの典男、殺人未遂で捕まっているベースのべっさんとともに、ロウマインズというバンドをしながら、夢を諦めきれず日々ギターの練習明け暮れる日々。
そんなあるとき、保健所爆破事件に遭遇しバンドのCDが犯人の遺留品に紛れ込む。そのことをきっかけに、犯人に影響与えたバンドとして世間の注目をあびることになる。
一躍有名になったロウマインズは、ついに自分たちが認められる日がやってきたと喜ぶ。ところが、彼らは大きな壁にぶつかる。ロックな精神を貫くか世間に迎合して売れる曲に妥協するか。理想と現実の差に苦しみ、もがき、それでもロック魂を漲らせる遅れてやってきた青春小説。

印象に残る文章

誰だって自分のことをすごいやつだって思っとうし、みんな今の生活に満足しとうふりをしとうだけたい

マリリン・モンローだって初めて映画がヒットしたとき『やったぁ、これでもうプロデューサーと寝なくてもいいわ』って叫んだらしいよ。上手く言えんけど、そこまで自分を信じきれな、なんもつかめんっちゃないかな。

自由ってね、失うものが何もないってことよ

本当の人生は夢をすて、妥協をおぼえたところがはじまる。

なにげないときに、さなぎから毒蛾が孵るように、干からびた夢の切れ端が息を吹きかけすことがある。もう一度妥協するのも、まずくない手だ。だけどそれがいやなら、ポケットになけなしの破滅を詰めて勝負に出るしかない。

なにがあるか、そこまで行ってみなければ、だれにもわからない。だけど。もしも終わりが見えたなら、その先にあるものだって見えるはずだ。

感想

この本のテーマは理想と現実のギャップの中で、夢を諦めるかのか信念を貫くか、という苦悩だと感じた。
私たちはどうしようもない現実を目の前に突きつけられたとき、自分の感情のぶつかる先を求め、諦め、焦燥する。現実に抗う勇気、エネルギーを私たちは中々持てない。たくさんの挫折を経験し、諦めることを学び、私たちは大人になる。でもふと、昔の夢を思い出し、忘れたはずな心の傷が蘇る。
この本の主人公、満はその現実を否定し抗い、一歩前へ踏み出す。その熱い強い魂に触れると、なんとなく私たちのやり場のない心の傷も癒されていく気がする。私たちにはできなかった、でも憧れていた生き方を彼が代わりに歩んでくれている。そんな彼を見ていると、生きていく勇気、エネルギーをもらえる気がした。
明日からも頑張ろう、そう思える力強いロックな精神溢れる作品でした。

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