アイデンティティの危うさを描く不条理な物語

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変身 (新潮文庫)

冒頭の有名な一説

「ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」

朝、目をさますと、自分が巨大な虫に変わっているのを発見するグレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな事態になってしまったのか。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらないありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、レポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様々な解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作の1つ。

アイデンティティの崩壊

虫に変身してしまったグレーゴルは母に悲鳴を上げられ、父にはリンゴをぶつけられて亡くなってしまいます。
朝起きたら突然虫になっていたグレーゴルは、「今日の自分は昨日の自分と同じであって、明日も変わらない」という自明ともいうべき確信が覆されてしまいました。

Amazonレビューより一部抜粋

意外とわかりやすい(☆4)

内容が難しいのかなと思ったのですがすらすらと読むことができました
ラストの結末には悩まされましたね

「私の理想のあなたでいて欲しい」(☆5)

とかく人間は相手にそう願います。カフカもその家族の思いと本当の自分らしさの間で苦悩、葛藤、もがいていたのではないでしょうか。官僚を望む父と作家になりたいカフカ、地下室の奥部屋で物書きをしながら誰にも会わず、食事を運んできてもらう生活が理想だったというカフカ。幼い頃の父の圧政がトラウマになったカフカ。相手に会わせ相手に与えてばかりいるうちに生きるエネルギーが枯渇してしまった。本当の自分に帰りたい「変身」願望。それを「変身」でシュミレーションした。「変身」の中で父から投げつけられた(背中にめり込んでしまった)リンゴは聖書のメタファーだと私は思う。「私の理想のあなたでいて欲しい」リンゴにはそんな父の願いが込められている。そして父はそれが自分のエゴとは気付かない。それは為政者に都合よく改ざんされたキリスト教思考、封建社会でもあり、それに染まった家族は疑問にすら感じない。常識、既成概念からの支配、呪縛、その中で血を流しながら苦悩するザムザ、本当の自分が悲鳴を上げる。

不条理の極致(☆5)

この作品の主人公グレーゴルが見舞われた悲劇はまさに不条理そのものである。
家族の為を思い、「我」を抑え身を粉にして一心に働いていたのに、ある日突然虫になってしまったことによってかつて自分へ向けられていた家族の尊敬の感情は徐々に消え失せてゆき、どんどん邪険に扱われるようになる。
そして最後には、まるで最初から存在しなかったものかのように、家族たちの心から消失する。
グレーゴルは一体どんないわれがあってこんな仕打ちを受けたのか。
結局、家族にとってグレーゴルとは、自分たちの生活を支えてくれている存在でしかなく、グレーゴルに価値を持たせていたのは唯一「働く」ということだけだったということか。
ここに、近代社会に生きる男の孤独感、疎外感を痛感する。これは現代にも通じるものである。
しかし、グレーゴルが最後に「感動と愛情とをもって家の人たちのことを思いかえす。」と語ったのが印象的である。
考えてみれば、虫になる以前人間として働いていた頃の彼の願いは、家族が自立することであった。そしてグレーゴルが虫になってしまってから、差し当たって明日の暮らしをどうにかする必要のある家族はめいめい仕事を見つけ、父はかつての威厳のある姿に戻り、母も仕事を始め、妹は一人前の娘となった。結果的にグレーゴルの願いは奇妙な形で実現することとなったのである。

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

  • フランツカフカ

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