自惚れるな!人間。~温かい「死」への向き合い方~

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優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

「大重版出来!」このポップに魅せられてなんとなく手に取った この本がこんなにも心揺さぶられる物語だとは思わなかった。

 私たち人間の世界では通称「死神」と呼ばれているものたちがいる。彼らは別に骸骨のような頭を持ち、鎌を振りかざしているような、、、そんな恐ろしい描写をしておらず、ただ"もの"として存在し、この世に未練を残したまま地縛霊化しそうな人間の心の闇や執念を解放する仕事をしているにすぎないのだ。ところが、ひょんなことから犬の姿を借りてとある病院で働くことになった「死神」がいた。しかもそこは普通の病院ではなく病を患った人々の終の棲家、ホスピスだった。そこで自分の仕事をやり遂げていく「死神」は心締め付けられる悲しい過去の事件に巻き込まれていく、、、。

 「死神」はその病院で働く"菜穂"という看護師にかわいがられて「レオ」という名前を付けてもらう。「レオ」は人間の人生などに興味はなく干渉する気などさらさらなかったはずなのに、この病院で働くうちに何か今までの自分にはなかった新しい感覚に目覚めていく。少しずつ変わっていく「レオ」がこの物語のクライマックスでは胸を打つような行動に出るとは、物語の序盤からは想像しえないものであろう。

 私たち人間が心置きなく「あの世」へ行ける状態なら魂は青々とした新緑の若葉のようなすがすがしいにおいがするらしいが、未練を断ち切れていないと果実が熟したような甘ったるいにおいがするようだ。それはなんとなくわかる気がする。
 

 私たち人間はいつ自分が死んでしまうかなんて普段から考えるような動物ではない。生まれてきたからにはいつか死ぬのは当たり前だが、毎日、いづれは訪れる「死」におびえて生きている動物などこの世にはいない。だからこそ急に死んでしまったり、突然余命宣告をされると今までの人生が走馬灯のように駆け巡り、こう思うのだろう。ああ、もっとやりたいことがあったのに。やっておけばよかった。このまま死にたくない。未練が湧き上がってくる。今までの、まだ余裕があると感じていた人生の中では何とも思ってなかった、どんなにちっぽけなことでも後悔の念と結びついてしまうものだ。後悔の果実が熟して割れていくのだ、、。

 「死神」たちは夢の中でその後悔の元を見つけてくれる、自分で解決できるように手伝ってくれる存在なのだ。何も魂を根こそぎ奪い去っていくのではない。少し前、深夜に「死神くん」というドラマがあったような気がしたがまああんな感じだろう。あのドラマは死神を人間と近い姿だと仮定して描写していたが、この小説では実態を持たない空気のような存在として描かれている。「死神」の姿かたちにもいろいろなものがあるようだ。(まあ生きている間は一生見れないものだが)

 この物語は普段私たちが深く考えない、「死」についてを温かく、やさしく描いた心温まるミステリーだ。この本の第二弾も出版されているそうなので2作続けて読んでみることをお勧めする。

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