日本の経営者が語るドラッカーの真髄

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週刊 ダイヤモンド 2011年 6/18号 [雑誌]

 目玉のドラッカー特集では、多くの日本の経営者や起業家らが、ドラッカーの教えを解説している。成功者たちが、その経験を踏まえた上で解説しているので、とても説得力がある。
 なお、登場する経営者らの肩書は、刊行時(2011年)のものである。

「目標が明確であること」の重要性

 海外を中心に被災地や紛争地の復興を支援するNPO法人「難民を助ける会」(AAR)は、東日本大震災でも、高齢者や障害者の支援を着実に遂行した。2011年3月の発災直後、宮城県庁を訪ねて被災地のニーズを把握。行政機能の遅滞を横目に、自主的に活動を進めた(途上国での緊急支援経験から、行政機能の麻痺には慣れていた)。「被災地で何をするか」がつねに明確だったことが、その活動を確実なものにした。

ドラッカーは、非営利組織が成果を出すための評価法として、五つの項目を挙げている。
①組織の使命
②顧客
③顧客にとっての価値
④成果
⑤計画

 ドラッカーの思想を体現していると自負するAARは、顧客に従い、行動した。支援内容は「自分たちが何を与えたいか」ではなく「顧客である被災者が何を求めているか」で決まる。被災地でひたすらニーズを聞いて回り、その上で、必要な支援を提供した。

目標を定め、自主性に委ねる

酒井久・キヤノン電子社長が実践した、ドラッカーの考えとその実践例がまとめられている。
・「組織に働く者は、共通の目標のために貢献する」→目的・目標を示した後は、その中身や実現方法に向けて細かいことを言わない。
・「会議は原則ではなく例外にしなくてはならない」→椅子をなくして立ちながら会議。こうすることで、会議の時間が短縮された。
・「日常化した毎日がここちよくなったときこそ(略)違ったことを行うよう自らを駆り立てる必要がある」→購入した既成の生産装置を捨て、同様の機能を持つ装置を自作した。「装置は買うもの」というそれまでの常識を捨てることで、結果として生産能力は増大した。
・「働き手を動かすのは自主性である」・・・職場のレイアウト変更をするにあたり、そのアイディアを現場に出させた。90分かかっていた作業時間をなんと40秒に短縮させた。

柳井正氏が厳選するドラッカーの七つの言葉

①よりよく行おうとする欲求
②何によって人に憶えられたいか
③自らの強みに集中せよ
④よりどころとなる事業の定義
⑤われわれの事業は何か
⑥顧客の創造に不可欠な「マーケティング」と「イノベーション」
⑦自ら変化をつくりだす

エリート大学は日本の弱み

 クレアモント大学で、ドラッカーから非営利組織の経営について指導を受けた田中弥生氏(独立行政法人大学評価・学位授与機構准教授)は、その後も書簡を通じて薫陶を受けた。
 1999年1月の書簡で、ドラッカーは日本の大学の現状を嘆き、こう語った。
「100年以上前、大学という仕組みが日本に誕生したときは、エリート大学は日本にとって非常に大きな強みだった。(略)。けれども現代ではそれが日本の弱みになった。その理由は最も賢い人が最も優れたエリート大学に入るのではなくて、カネ持ちの家の人がエリート大学に行く時代になったからだ。東大や慶応大に入った学生の家族の所得層に関する統計を私は見た。富裕層の子どもたちはカネをかけて塾に通い、エリート大学に入っている。結局、富裕層しかチャンスがない。(略)。これではまずい。早急に高等教育改革をする必要がある」
 それから時が過ぎた。日本はまさに、所得格差が教育の格差に結びつくという、ドラッカーの危惧通りの社会になってしまった。

感想

 何年も前の刊行だが、ドラッカー特集として非常に濃い内容だったので、まとめた。
 ドラッカーの著書は、根拠を示さずに結論だけをズバズバ言っているようなところがあって、おそらくそれなりの人生経験や読書量がないと、消化不良に陥るのではないかと思う。しかし、現代の経営者たちがドラッカーの言葉をどのように解釈して実践したかを知ることで、霧が晴れるように、その理論が明晰になる感がある。
この特集にある、翻訳者の上田惇夫さんが選ぶ「20の名言・至言」は、入門編としても復習としても読みやすいだろう。為末大さんがドラッカーの教えをトレーニングに生かしたというのも興味深い。
週刊ダイヤモンドの特集はいつもおもしろいが、本号もまた素晴らしく充実した内容。永久保存版といって過言ではない。

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