つい先ほど、貴方は死ぬ予定でした。

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ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)

「私は死神です。つい先ほど、貴方は死ぬ予定でした。でも誠に勝手ながら寿命を3日ほど延長させていただきました」
 夏の病院。入院中の少年の前に現れたのは、ミニスカートに白いTシャツ姿の少女だった。死神には月ごとに集める魂の『ノルマ』があり、綺麗な部分を集めて新しい魂にするのだという。ペットボトルのリサイクルみたいなもの、というのだが……。

章構成・ストーリー

 第1話『A life-size lie』
 第2話『ジョニートーカーの≪僕が死ぬ本≫』
 第3話『8月の雨が降らない場所』
 第4話『クラウン、泣かないで』
 他、プロローグ、エピローグ。
 本作は章ごとに登場人物の変わる群像劇であるが、登場する世界は同じで、全ての物語がエピローグに収束していく形となっている。

『A life-size lie』

 病気を患い死期の迫る少年の元に、1人の少女が現れる。
「私は死神です」
 そう名乗る少女は、死者の魂を月ごとに回収してまわっているという。ただし、集めてリサイクルに使う魂は、綺麗なものでなければならない。少年の心が濁っているせいで、少女は魂を回収できないのだと説明する。
「あなたは、嘘をついていますね?」
 主人公の少年には佐伯春花(さえき はるか)という幼馴染の同級生がいて、彼は彼女に『ある事』伝えられないでいた。
「どうして僕は、まだ生きているんだろう」
「そんなに、死にたいの?」
「死にたいわけじゃない。でも、生きているのは面倒だ」
 迫りくる時間のなかで、少年は佐伯と、死神と言葉を交わし続ける。

『ジョニートーカーの≪僕が死ぬ本≫』

 君がページをめくるたびに、僕は死に近づく。僕が死んで、この本は終わる。
 そんな内容の『僕が死ぬ本』を最後に、絵本を書くことをやめた人気作家。
 彼はお気に入りの水族館で、死神と名乗る少女に遭遇する。
「私は死神です。死神はもうすぐ死ぬ人間の居場所を、知っているものです」
 男は半信半疑で自称死神の少女に付き合うが……。

『8月の雨が降らない場所』

 ヘリコプター操作中に意識を失った男、ハラダ。目を開いた彼の横に、いないはずの同乗者がいた。
「このままであれば、ほどくなく貴方は死亡します」
「俺が、死ぬ?」
「私は死神です。あなたの死期が近いから、私はここにいます」
 死神と名乗る少女は、ハラダの寿命を10日間延長する代わりに、ある人物を助けて欲しいと交渉をもちかける。ある人物――ヒカルという女性は、8月20日、自分の誕生日に『朝陽』を見ることができなければ自殺をしようと心に決めていた。その日の降水確率は100%で――。
「朝陽が、見たいです」
「聞こえない! もっと大きな声で!」
「朝陽が見たい!」
 残された時間のなかで、ハラダはヒカルの願いを叶えるために奮闘する。

――馬鹿みたいで、夢みたいな何かをひとつ、諦めないで死にたいだけだ。

『クラウン、泣かないで』

 大切な者の死から立ち直れずにいる佐伯春花。
「はじめまして。可愛らしいお嬢さん」
 親の再婚が理由で引っ越してきた先には、かつてサーカスの『クラウン』だったと語る老人がいた。彼は『ピエロ』と『クラウン』の違いを、面白おかしく誇らしげに語るのだった。
 ある日、佐伯はクラウンの部屋から聞きなれない声を耳にする。
「まだ死なないのか?」
「わかりません。本来ならもう死んでいるはずです」
「どうして死なない?」
 ――会話を盗み聞きした日、佐伯の元に1人の少女が現れる。
 

 是非、手に取って読んでみてください。

感想

 ベイビー・グッドモーニングでは、『死』に対してシンプル(逆に難しい)に描かれている。
 生死に関わる物語を書くと、どうしても「薄っぺらい」、「この作者はわかっていない」と思われやすくなってしまう。だが本作では様々な人物視点から描くことで、一人一人の終わりに『重さ』が生まれている。
 死ぬことに対しての『受け止め方』には決まりがなく、それはフィクションでもノンフィクションでも同じだと自分は思っている。だからこの作品を読んだ人の感想はもちろんそれぞれだろうし――うーん、うまく説明できない。このうまく言葉にできない状況が、『命が終わること』に対してうまく書かれている証拠であるように思う。
 この作品は、ライトノベルのジャンルを超えて、幅広く読んでもらいたい作品である。
 作者はこの物語をとても書きたかったんじゃないかなぁ、と思いました。

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