「おそ松くん」から昭和カルチャーを読み解く!「シェーの時代」の文化史

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シェーの時代―「おそ松くん」と昭和こども社会 (文春新書)

はじめに

漫画家・赤塚不二夫が昭和37年から連載を開始した漫画「おそ松くん」。これを原案としたテレビアニメ「おそ松さん」が大ヒットしたことにより、現在再び「おそ松くん」が注目を浴びている。本著の著者である泉麻人は、赤塚不二夫のことを「昭和31年生まれの僕が、少年時代、最も影響を受けた漫画家」であるという。「おそ松くん」と共に少年時代を送った著者が当時を振り返りながら、「おそ松くん」が描かれた時代、その文化について記述した一冊である。

時事・事件ネタから読む当時の世相

泉は、「おそ松くん」には社会的な時事もよく扱われていると指摘する。

  • 偽札「チ‐37号事件」
非常に精巧な偽札が全国に出回った未解決の偽札事件。1巻に収録されている「ウヒョホとわらってゆうかいだ」の中に、6つ子たちの父親・松野松造が偽の千円札を作ろうとしている場面がある。

  • 台湾バナナのコレラ騒動
2巻に収録されている「バナナをうるのはくろうをするぜ」で一本のネタとして取り扱われている。

  • 実在する政治家をモデルとしたキャラクターも
「おつぎの時間でござあます」(5巻収録)では、「しょうらいえらい大臣になるんざます」と教育ママにしごかれている池田勇人そっくりの「ハヤトちゃん」が登場する。

松野家の構造から見えてくる時代背景

1巻に収録されている「賀木五六四の選挙運動」の回で縁側・庭の様子が俯瞰気味に描かれている場面がある。窓際の垣根の背が低く、縁側から路地の様子が見通せる。垣根の一角には素朴な木戸が設えられており、庭の方から家の中に出入りできるようになっている。また5巻収録の「チビ太ガラクタ作戦をたてる」の回では家の外観がわかる引きのショットがある。平屋で、軒に三角の屋根が付き出しており、和風ながらほのかに洋風住宅のセンスも漂う。著者はこの松野家の構造を「下町というより(中略)西東京の『文化住宅』の雰囲気が感じられる」と述べている。また、屋根にはテレビのアンテナが、門柱の右手には牛乳箱が取り付けられている。

漫画とテレビと歌謡曲

「おそ松くん」からも「シェー」という流行語が誕生しているが、テレビから流行したことばや歌謡曲のフレーズが積極的に「おそ松くん」の中に取り入れられている。そのうちのほんの一部を以下に列挙する。
<ガチョーン><およびでない><ハッスル><トサカにきちゃう><あーやんなっちゃったな><びっくりしたなモウ><ユメもチボウもない>
♪山男の歌 ♪ハイそれまでョ ♪無責任一代男 ♪ホンダラ行進曲 ♪学生節 ♪こまっちゃうナ など。

「シェー」の流行

時代の流行語「シェー」が「おそ松くん」作中に登場したのは昭和39年春に掲載された「イヤミなつりぼり イヤミなサカナ」(7巻収録)。それ以降「シェー」の場面が目につくようになる。「ミーのデッ歯はダイヤの入れ歯」では「つぎシェーやって!!」とチビ太に促され「シェー」をするというシーンが挿入されているため、昭和40年初頭にはサンデー読者の間では流行語として認知されていたのだろう、と筆者は指摘する。また昭和40年には巨人・長嶋茂雄がファン感謝デーで「シェー」を披露。映画『怪獣大戦争』ではゴジラが「シェー」をやる。翌年41年に初来日したビートルズも「シェー」をやった。昭和45年には浩宮徳仁親王が日本万国博を見学した際に「シェー」のポーズをとった。

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