一流の歌人が語る、一流の歌人の心

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東海のうたびと

著者は歌人・加藤治郎

加藤治郎は未来短歌会に所属し、1988年『サニー・サイド・アップ』で現代歌人短歌賞、1999年『昏睡のパラダイス』で寺山修司短歌賞を受賞した第一線の歌人。歌書に『短歌レトリック入門』『うたびとの日々』など。毎日新聞毎日歌壇選者。朝日新聞東海歌壇選者。

現代短歌を変革してきた東海ゆかりの歌人たち

岡井隆、春日井建、荻原裕幸、野口あやこ…。本書は中日新聞・東京新聞夕刊文化面の連載を書籍化したもので、東海地方にゆかりのある歌人31人を取り上げている。岡井、春日井をツートップに大物ぞろい。加藤治郎は、あとがきで「(31人は)現代短歌を代表する歌人である。短歌における東海地方のポジションの高さを証明した」と書いた。

一流が描き出す一流のたたずまい

加藤治郎は親交のあった今は亡き春日井建を愛情を込めてこう語る。
「春日井健は歌人の生を全うした。晩年の闘病…(中略)…ラジウム岩盤浴の歌は壮絶であった。(最終)歌集には親族からのメッセージがあった。そこには『本書は著者生前に完成し、完成本を見て、逝きました。生前に寄贈名簿を用意しておりましたので、その遺志により、寄贈させていただきます』と記されていた。私は震えた。今の時代に、こういう最期を迎えることができるのか。様式美を湛えた生であった。」
後藤左右吉と春日井建の出会いをこう描く。
「(後藤は)南山大学文学部の夜間で学んだ。春日井建も南山の文学部だったが、時間帯が違う。どういう訳か、その日、夜間の時間帯に春日井はいた。『君、短歌をやっているのか』と声をかけてきたのである。後藤が『そうだ』と応える。おそらく、春日井は、同年代で歌を詠む男の存在を耳にして、わざわざ夜間の後藤に会いに来たのだろう。春日井とは、そういう男である。」
岡井隆のエピソードは複数の歌人の頁で登場する。加藤の師匠・岡井に対する敬愛の念が窺える。
また、島田修二が穂村弘に向かって「ほむらか。おまえ、バカだよな。おまえみたいなバカみたことねえよ」と温かい(?)暴言をはく場面。愛知県立大学キャンパスで荻原裕幸が西田政史に声をかける出会いの場面、など。歌人たちが想いが交錯するエピソードの数々が、歌人たちの代表歌を味わい深く彩る。

紹介された主な歌人・代表歌

学友のかたれる恋はみな淡し遠く春雷の鳴る空のした               春日井建
▼▼▼▼ココガ戦場?▼▼▼▼▼抗議してやる▼▼▼▼▼BOMB!     荻原裕幸
するまえに検索をして一番上にでてくる名前で抱きしめていて           野口あや子
男の子なるやさしさは紛れなくかしてごらんぼくが殺してあげる          平井 弘
するだろう ぼくをすてたるものがたりマシュマロくちにほおばりながら      村木道彦
母と子の指のあはひに幾たびか綾取りのあや架かりて消えぬ           稲葉京子
観覧車回れよ回れ想い出は君には一日我には一生                 栗木京子
牡蠣を割けばひとつしずくにまみれいる白き命あり濃霧のにおい          松平盟子
われは遊鬼 百世ののちの黒き星黒き砂ともなりてあそばむ            山中智恵子
抑圧のかなたにまろき丘立ちてダダダダダダダダダと一日              岡井 隆
抱きしめる君の背中に我が腕をまわして白い碇を下ろす               立花 開
「ナイス提案!」「ナイス提案!」うす闇に叫ぶわたしを妻が揺さぶる        堀合昇平

感想

短歌をよく知らない、これから学びたいと考えている人にも、現代短歌界の雰囲気や流れが分かる一冊だと思います。本書では、著者・加藤治郎さんが難解な短歌に対しても、独自の分かりやすい解釈を加えています。短歌に少しでも興味のある人に手に取ってもらいたい本です。

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