妊娠中は一般的に感染症に罹患しやすく、また重篤化しやすい

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薬局 2016年 04 月号 [雑誌]

妊婦における感染症の”Susceptibility”と”Severity”

妊娠中は一般的に感染症に罹患しやすく、また重篤化しやすいとされている。

T細胞

 妊娠時には、母体のリンパ球は活性化するが、脱落膜ではTh2細胞が優位になっている。これはトロフォブラストを攻撃するTh1細胞を少なくし、胎児を直接攻撃しないが抗体産生を誘導するTh2細胞を増加させることにより、妊娠を成立させるためである。Th2細胞が有意になる機序としては、妊娠中に分泌が増すプロゲステロンやプロスタグランジンがTh2細胞を誘導することが知られている。また、細胞障害性T細胞(CD8陽性T細胞)も妊娠中は抑制されており、胎児を攻撃できないことも示されている。

NK細胞

 妊娠中のNK細胞活性は抑制され、妊娠初期より低下し、分娩前までに低値を維持するが、分泌時には非妊娠時レベルまで回復する。NK細胞は拒絶反応に関与する細胞であるが、トロフォブラストはHLA-Gという原始的なHLAを発現し、NK細胞からの攻撃を免れている。これはT細胞についてもどうようである。

白血球

 妊娠中の白血球数は非妊時より増加し、15,000/μLまで上昇する。増加は主に顆粒球と単球で、リンパ球は相対的に減少する。単球や顆粒球はG-CSFやM-CSFにより増加し、これらのサイトカインは胎盤や脱落膜から分泌されている。妊娠時には、前述したように、細胞性免疫が低下しているため、好中球数や機能を亢進させて免疫能を補完していると考えられている。

感染症治療薬の母児への影響と薬学的管理の実践

抗菌薬
1.ペニシリン系
・リスクの上昇がみられなかったとする報告が多数
・アモキシシリンと口唇裂の関連を示唆する報告があるが、結論は出ていない

3.アミノグリコシド系
a.ストレプトマイシン
・疫学研究では先天奇形発生の増加は認められなかった
・聴覚障害の症例報告がいくつかあり、どのくらいの用量が影響出るのかは不明。

b.ゲンタマイシン
・妊娠時使用については症例対照研究があり、奇形児と健常児の間に使用した率に差はなかった。
・ヒトで妊娠初期に使用した場合に両側水腎症や腎形成異常などの症例報告がある。

4.マクロライド系
a.エリスロマイシン
・幽門狭窄症との関連性は否定されている。
・心血管系の先天異常の増加の報告があり、ほかの研究報告が待たれる。

b.クラリスロマイシン
・催奇形性のリスクは否定的
・流産のリスク上昇の報告が1件ある。

6.キノロン系
b.レボフロキサシン
・動物実験では催奇形性作用は認められなかったが、胎児に発育抑制、骨格異変の出現が認められた。
・類似薬のオフロキサシンの妊娠初期使用に関する研究では、リスクの上昇は示されていない。
・妊娠中の偶発的な使用に過度な心配は不要である。

7.サルファ剤
a.スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)
・妊娠前12週にトリメトプリムを処方された母親の子どもでは、非暴露児と比べて先天異常の発生割合が高く、特に心奇形、四肢の奇形が有意に多かったと報告されている。
・口唇口蓋裂との関連性を示す報告などもあるが、暴露症例が非常に少なく結論は出せない
・妊娠第1三半期の細菌感染症治療においてはほかの抗菌剤使用を考慮することが薦められている。
・妊娠計画中~初期に使用せざるを得ない場合には葉酸補充を行うとリスクを減少させることができる。
・新生児に重症の黄疸を起こす可能性があるので、妊娠32週以降は使用を避けるべき。

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