コンテンツや創作の秘密は、人の脳が世界を認識する仕組みにある 「コンテンツの秘密」

858views折笠 隆折笠 隆

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コンテンツの秘密―ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書 458)

著者がプロデューサー見習いとしてジブリで働いた経験から、コンテンツやクリエイターの本質について考察する。

コンテンツの情報量とは何か

コンテンツとは、現実世界の模倣である。また、人間がコンテンツを好むのは、本能である。

  • アリストテレスによれば、人間はそもそも現実の再現(模倣)を好む。その模倣によって、生存に有利な技術を学ぶ

宮崎駿の絵が好まれるのは、主観的情報量が豊かで見る者に心地いいから。

  • コンテンツには「主観的情報量(=脳が認識する情報)」と「客観的情報量(=線数、画素数など)」がある。客観的情報量では、アニメは現実世界に及ばない
  • だが、人は世界を認識する際、関心があるものをより大きく感じる(=主観的情報量)。飛行機や人を現実より大きく描いたりすると、人は実写よりもアニメがリアルだと認識し、気持ちよさを感じる

情報量から見たコンテンツの定義は「客観的情報量を現実よりコンパクトに抑えつつ、主観的情報をより豊かに表現したもの」。

クリエイターは何をアウトプットしているのか?

コンテンツは現実そのままの再現ではない。「人の脳内にある現実(イメージ)」の再現である。

  • 人は世界をありのままではなく、対象物の特徴を抜き出して認識する。現実の顔と全く違う似顔絵を「似ている」と感じる例など
  • クリエイターは、その脳内イメージの仕組みを見つけ出し、技術を駆使して人々に再現してみせる仕事。クリエイターは苦しむのは、それが極めて困難な作業のため

(人間だけではない。人工知能も、特徴を抽出する認識を学習できる)

コンテンツのパターンとは何か?

各人の脳内認識パターンは似たようなもの。だからコンテンツはワンパターンに陥る宿命。

  • マンネリを打破する工夫は①わざとノイズや不自然な要素を入れ込む②結末を決めずに作る(=予測不可能)③見たことのない内容④高価そうに作って圧倒、など

クリエイターが表現にこだわるのは本能である。

  • 対象そのものより表現手法の方が多様性があるから。新しいものを生み出す可能性がある
  • とはいえ、一流クリエイターはそれぞれにこだわるポイントを持つ。手塚治虫はストーリー、宮崎駿は驚くような映像表現、庵野秀明は音、押井守は世界観、など

優れたコンテンツは、人の情動を揺り動かす。

  • 感情に響くということは、ユーザーがより豊かな主観的情報量を得たということ。トトロが人気の理由は、懐かしい風景や自然回帰願望のような理屈ではなく「トトロのお腹がふわふわして気持ちよさそう」だからでは?
  • つまり、クリエイターは人が脳内でどんな主観的情報を望むのか、理解する必要がある

オリジナリティとは何か?

再定義する。コンテンツとは、クリエイターのヴィジョンを表現したのものである。

  • ヴィジョンとは、「クリエイター自身の脳内にある」イメージの蓄積
  • ゼロからヴィジョンを構築できるクリエイターなどいない
  • 天才とは、凡人が現実世界で行う試行錯誤(シミュレーション)を頭の中だけで済ませ、理解・評価できる人

オリジナリティとは偶然の産物、もしくは既存物を違う角度で見せたものにすぎない。

  • 試行錯誤や既存パターンの組み合わせ、再現の不完全さなどにより、思いがけず新たな価値を持つ差異が生まれる。これがオリジナリティの正体。決してゼロから鮮やかに生みだされるものではない

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