「貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人のこと」質素の哲学を貫いた大統領ホセ・ムヒカの言葉

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世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉

  2012年6月20日から22日までの3日間、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで国連の「持続可能な開発会議(Rio+20)」が開催された。
 約3万人の各国首脳と閣僚級らが参加していたこの会議で、南米にある小さな国の大統領が最後にスピーチの演台に立つ。
 「ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てば、この惑星はどうなるのでしょうか。西洋の富裕社会が持つ傲慢な消費を、世界の70億〜80億の人ができると思いますか。なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか。私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作ってきたのです。マーケット経済がマーケット社会をつくり、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。グローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか。」
 ノーネクタイのシャツにジャケットというラフな出立ち、資料を使わず自分の言葉だけで本音を暴くストレートな問いかけに聴衆は次第に引き込まれた。
 「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。」
 ウルグアイ東方共和国第40代大統領ホセ・ムヒカ。彼のリオ会議でのスピーチはスタンディングオベーションの喝采に包まれ「もっとも衝撃的なスピーチ」と呼ばれるようになった。
 本書はホセ・ムヒカ氏の波瀾万丈な生涯とともに、質素な哲学を貫いた大統領の賛否両論巻き起す政策にTIMEやGuardianなどが激賞した実績とその稀有な言葉をちりばめ、紹介した書である。
 ムヒカが大統領として活躍した時期は、2010年3月から約5年間。大統領官邸に住むことを拒み、住居は《倒れそうな農場》で警備を担っているのは愛犬と2名の警官だけ。執事や家政婦も雇わず、大統領専用車は使わない。大統領としての資産の約90%を慈善事業と所属する政党に寄付し、残りの貯金は将来、自分の農園に貧しい子供たちを受け入れる農業学校建設目的に充てる。
 ムヒカのその生き様には「質素は“自由のための闘い”」であり「物であふれることが自由なのではなく、時間であふれることこそ自由なのです。」という人生哲学が裏打ちされている。
 ムヒカには「余裕のある人には弱者を助ける義務がある。貧しい生活をしている人々の生活が改善されれば、我々の生活も良くなります。」「人生はもらうだけでは駄目なのです。まずは自分の何かをあげること。どんなにボロクソな状態でも、必ず自分より悲惨な状態の人に何かをあげられます。」という義賊の精神がある。
 その精神は高校卒業後、進学したものの中退したムヒカが政治活動に携わり、1960年代に隆盛した左派過激都市ゲリラ「トゥパマロス」の活動に身を投じていくことにも通じる。だが「格差のない社会と自由を夢見て」革命運動に没頭したムヒカは13年にも及ぶ獄中生活を送った。この時代にこそ、多くのものを持たず質素であることを是とする人生哲学が形成されていった。
 刑務所から釈放されて以降1995年、ムヒカは政治家としての一歩を踏み出し2009年11月末の大統領選で見事当選。後にムヒカはこんな言葉を残している。
 「私の人生は恵まれています。社会主義者として闘い、考えたこともなかった、大統領というアルバイトをさせていただいている。我々の世代は世界を変えようとした。格差をなくすために闘い、潰され、砕かれた。でも、私は、まだ夢を見ています。」
 大統領として残した実績や言葉は本書を実際に手にとって見届けてほしい。

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