23区格差

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23区格差 (中公新書ラクレ 542)

23区格差

1.東京は「少子化」になっていない

  • 「少子高齢化」とは、言うまでもなく子どもが減って高齢者が増えることを指す。しかし、東京は子どももお年寄りもどちらも少ない。理由は簡単だ。東京の最大の魅力は働く機会が多いことであり、その結果として、15~64歳のいわゆる生産年齢人口が多い。子ども人口比率が低いのは、この相対的結果に過ぎない。
  • 全国の子ども(0~14歳)の数について、2000年と2010年を比べると、ほぽ鹿児島県の人口と等しい167万人(9.0%)も減少した。ところが、この10年間に子どもの数が増えた都道府県がふたつだけある。
  • ひとつは神奈川県の0.3%増。そしてふたつ目が東京都。こちらは4.0%増。23区で見ると、これをさらに上回る5.1%の増加を示す。
  • 0~4歳の幼児人口に着目すれば、もっと顕著だ。全国の10.3%減に対し、東京23区は8.2%増。少子化どころか、子どもも東京に一極集中している。

2.品川区で子どもの数が増えている理由

  • まず特筆すべきは、同区の学童保育の充実度だ。『東京の児童館・学童クラブ事業実施状況』を見ると、品川区の学童クラプ登録児童数(2014年)は約5千470人。2位の世田谷区(約4千500人)を千人近く上回る。
  • 東京23区では、現在すべての区で、小学生に防犯ブザーが配られている。品川区の「まもるっち」は、これにGPS機能を搭載した、いわゆる「キッズ携帯」の一種だが、注目すべきはそのシステムにある。
  • 子どもが発したSOSは、区のセンターを通じて発信地点近くの登録ボランティア協力員に送信される。協力員は、自治会や商店街やPTAの人などで、その数は約1万3千人に及ぶ。単純計算でおよそ40メートル四方に1人の協力員がいることになるから、誰かがすぐに現場に駆けつけることができるのだ。

3.なぜ港区に富の集中が起きているのか

  • 後述するように、港区には情報産業をはじめとした成長産業が集積している。そこで働く人たちは、高い収入を得ていると考えていいだろう。しかし、実は港区で働いている人のうち、港区に住んでいる人の割合はわずか5%しかいない。港区で支払われる給与の大部分は区外に流出しているのだ。
  • 富が内側から生まれたのではないとすれば、外からやってきたと考えるしかない。港区で「富の集中」が進んだのは、高地価で生活コストも高い港区でも住宅を購入することができる、あるいは高い家賃を支払うことができる高額所得者が増えたからにほかならない。

4.専業主婦を夢見る世田谷区の女性

  • 35~45歳の有配偶女性の就業率は、全国の60.7%に対して東京23区は56.1%、世田谷区は23区最低の51.8%にとどまり、全国平均と比べて10ポイントも低い。ちなみに、22位は杉並区、21位は練馬区、20位は目黒区と、若い主婦の就業率が低い区は、西部山の手エリアに集中していることがわかる。
  • 保育サービス利用者数を未就学児の数で割った保育施設の充足率も30.8%。これも23区で一番低い。トップの荒川区(47.0%)とでは、実に1.5倍以上の差がある。
  • しかし見方を変えれば、「奥様文化」の頂点に立つ世田谷区は、そもそも子どもを預けてまで働くという風土そのものが、弱いまちだということもできるだろう。

5.定住率が低い区こそ「勝ち組」になる?

  • あらためて図表27をながめていただきたい。中央区、江東区の両区を例外として、定住率が低い区は、順に港区、世田谷区、目黒区、千代田区、文京区。リクルート住まいカンパニーの『住みたい区ランキング』の上位区、「三高」の区、高齢化率の低い区が並んでいる。これは図表1に示した知名度が高い区とも重なり合う部分が多い。
  • 一方定住率が高い区は、北区、台東区、葛飾区、足立区、墨田区、荒川区。これらは「住みたい区」のランク外と完全に一致。「三平」で高齢化が進む、知名度の低い区がズラリと名を連ねる。
  • 「常識」と逆に、定住率が高い区こそ「負け組」に、定住率が低い区こそ「勝ち組」になっている。定住率の向上を錦の御旗のように掲げる研究者や政治家や行政マンは、この結果にどうコメントするだろうか。

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