本を読むということは何なのか。

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読書の方法―未知を読む (講談社現代新書 (633))

読みの基本、音読

 筆者の子供のことは、新聞を音読する老人がいた。「うるさいから黙って読んだらどうだ」というと「声を出さなければ、読めないではないか」と悲しそうに答えられた。当人は、声を出さなければ読めない、と思い込んでいた。黙読が一般的になったのはそれほど昔のことではない。

アルファー読みとベータ読み

<アルファー読み>
既知を読むこと。
ものを読んでいるという満足感を与えてくれる。しかし、そういう読者によって読者が変化、進歩することはできない。

<ベーター読み>
未知を読むこと。
下敷きがない。文字だけを手がかりにして分かる必要がある。しばしば、とんでもない誤解を招く。

アルファー読みが重視される危険性

 現在ほど出版が盛んでなかった時代においては、本も少なくベーター読みの比重が高かった。印刷出版文化が発達して大量に本が廉価で出回った。
アルファー読みで消化できるような読み物は社会の要求になった。商売がそれを放っておくわけがない。アルファー読書の意を迎える出版物が多くなり、やがて殆どすべてがそういう出版物になる。いわゆるマスコミ文化である。

幼児の言語教育の重要性。

母乳語(≒アルファー語):経験できる世界の物事の言葉。「ことば」と「もの」の間に関係があることを学ぶ。
離乳語(≒ベータ語):こどもの経験したことない言葉。「ことば」と「もの」の関係は切れるということを学ぶ。

 幼児においては母乳語と離乳語を身につけなくてはならない。離乳語を分からないと、学校の知識の学習においておおきなハンディキャップとなる。ことばの教育は学校で始まるのではなく、就学以前において基礎の教育は完結する。幼児の言語教育が、その子の一生を左右する意義をもっている。

知能の差は言語の差

 白人のこともと黒人のこどものIQを比べると、黒人のこどもの方が低い。これを根拠として黒人に対して白人の優秀さを示すものがあとが絶えなかった。これに疑問をもった社会学者が調査に乗り出したところ、黒人の母親は、ガラスを割ったこどもに向かってただ一言、「なんてことをしたんだ」と叫び尻を殴るで終わる一方、白人の母親は言葉を通じてそれがいかによくないことを分からせようとするという傾向があった。この後、黒人の母親を訓練して、こどもにことこまかにわけを話す叱り方をするようにしたところ、その母親のこどもは白人のこどもと同じくらい高い知能指数を示した。善悪の区別を言葉によってつけようとする訓練は、抽象的思考への導入になる。

今こそ、素読を

 近代教育の段階的読みではベーター読みですら、アルファー読みと錯覚する心配がある。いつまでたっても高度なベータ読みに入ることが出来ない。こういうテクストで練習しても、少し難しくなると、すぐに落伍する。
 素読を可能にするには、四書五経のような古典的価値の高い少数の原典を選定することである。
 素読では、読んだことが、わからぬということが分かっている。これがベーター読みへの原動力になる。アルファー読みから、ベータ読みへの転換がこれほど困難なのなら、思い切って、はじめからベーターに入る。新しい素読の方法を検討してみてもよいだろう。

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