一文に凝縮された世界観を堪能しよう!

9851viewsvioletReadervioletReader

このエントリーをはてなブックマークに追加
一文物語集

一文物語集

  • 一文に凝縮された世界観を堪能しよう!

  • 世界のすべての人びとを愛するために、彼女は電話帳を開き、ひとりひとりの名前を精魂こめて覚え始めた。

  • 自分の潰れた醜い声で祈るのは冒涜だと感じて、彼女は祈りを求められても押し黙っており、周りの信者からは不信仰と看破(みな)されている。

  • 口のきけない人形師が「なぜ? なぜ? なぜ?」と半永久に問い続ける自動人形を作って自分の息子代わりにかわいがった。

  • のぼってゆくひとがいつのまにか行方不明になってしまう螺旋階段があって、もっぱらくだるためにのみ使われている。

  • 核シェルターに逃れて生き残ったふたりの男が、地球上の国々を賭けて、しんみりとトランプ遊びをしている。

  • 大河を飛び越えて女のもとへ駆けつけると、すでに彼女は凍りついており、抱き締めるとひびが入った。

  • 幼馴染みのふたりが年老いて死刑囚の監獄で再開し、一方が執行のために連れ去られる日まで、寝る間も惜しんで、幼年時代の出来事や故郷の風光を思い出しあった。

  • 同僚たちと花見の席で大騒ぎをしている最中にふと、自分が前世でこの樹のしたへ誰かを殺して埋めたことを思い出した。 

  • 老いた船乗りが漂着した孤島で見出した苔だらけの塊は、故国に放置してあった母親の墓の墓石だった。

  • 演奏会の直前に、オーケストラの団員たちが楽器ケースを開けると、それぞれのケースの大きさに見合った子供の木乃伊が入っている。

  • 若いころ婚約していた女のもとへ長い手紙を書き送るのが男の五十年来の日課であり、ぶ厚い封書を開封せずに焼却するのが五十年来の女の日課であった。

  • 公園で日向ぼっこをしていた余所者が、突然目隠しされて円形広場の中央へ連行され、周囲の群衆から「殺したな」「お前が殺したんだ」と罵声を浴びている。
一文物語集

一文物語集

  • 飯田茂実

関連まとめ

本のまとめカテゴリー


コメントを書く