「為すべきことを為す」ーー理解しながらも出来ない、心を決めるべき時に読むファンタジー

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黄金の王 白銀の王 (角川文庫) [kindle版]

はじめに

如何に訓読漢字が使用され、世界観が古代日本に酷似していようと、ファンタジー小説としての読後感想文以上書評未満のまとめです。
尚、感想文とは芸術の一つである文芸作品に対して感情で下す評価であり、書評とは研究対象たる文学作品に対して論拠を示して下す評価、を前提としています。
また、評価の手法として著者の背景、他作品とは一切干渉を図らず、飽くまで対象作品一冊に限ります。

配点基準は以下の通りです。
※各20点満点で配点し、合計値を100点満点で総合評価点としています。

  • 装丁
  • 文体
  • 展開
  • 主張性
  • 文学性

あらすじ

祖を同じにしながら永きにわたって鳳穐と旺廈は王権を奪い合い、翠の国土は疲弊していた。
「為すべきことを為す」ーー同じ訓えに従いながら敵対する鳳穐の頭領と旺廈の頭領は、祖先と一族の無念と生理的な憎悪を胸に抑え、一族の為ではなく翠を守り育む為に手を取り合うことを誓う。
敵対する一族の頭領として誇りを互いに抱きながら、二人の頭領が選んだ最も困難な道の行方とは。
古代日本によく似た異世界におとずれる平和の姿とは。

総合評価 65点

  • 装丁 :20
  • 文体:10
  • 展開:10
  • 主張性:15
  • 文学性:10

装丁(表紙)

不本意ながら、当該書を電子書籍で拝読した為、表紙に限り言及する。
イラストを表紙に据えるとライトノベル感が出てしまうものの、流石の皇なつき氏はその一線を画している。内容からも読者層を意識して選択したことが窺える。読後、表紙に込められた描写意図を発見できるのは、イラストならでは楽しみであり、小説に於いてイラストレイターの手腕が問われる部分である。

文体

文体における配点理由は、偏に世界観と文体の齟齬にある。即ち、固有名詞や造語で訓読漢字を多用しているにも関わらず、カタカナ表現がしばしば見受けられる。古代日本を模した世界観でありながら、現実世界における表現で描写補足をしている。文体は読者と世界観を共有する為に必要不可欠であり、この齟齬は致命的といえる。

展開

展開はテンポが良く次々と出来事がおこり、読者を飽きさせないだろう。主人公二人が親交を深めていく様子も段階を踏んで描かれている。一方、大一番の見せ場で実現性に乏しく読者に不信感を抱かせるのも否めない。

主張性

主張性とは、著者が作品を通して描いた核である。当該作品においては「為すべきことを為す」であり、一貫してしばしば明記されていた。実際、主人公二人も言動で示し、小説という完成された世界から解き放たれた時に残るものがある以上、著者の狙いは果たされたことになるだろう。

文学性

当該作品に限って、文学性は高くないと評価せざるをえない。何故なら、文学性の一つの解釈として比喩表現が挙げられる為だ。ある事象を示す言葉を使用せずに表現することである。文体でも挙げた通り、世界観に合致しない言葉遣い、また戦場における血生臭さの皆無、主人公の言動に傾倒しがちで情景描写の欠如は文学性を問われる部分である。

感想

#極めて個人的な感想
一息に進められる読みやすさと面白さはある。が、読み込むには至らない。ゴールデンタイムに放映されるドラマのようで、世界観と実現性に齟齬が見受けられて、しばしば違和感を覚える。
世界観の作り込みに粗さがみられるものの、テンポの良さは格別で、気付けば読み終えられる。

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