イノベーション・クエストⅢ そして伝説へ・・・

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イノベーションの最終解 (ハーバード・ビジネス・セレクション)

1.背景・要約

イノベーションシリーズでお馴染みのクレイトン・クリステンセン教授と、クリステンセンの教え子のスコット・アンソニー、マッキンゼー勤務のエリック・ロスの3人が2004年に上梓した「Seeing What’s Next: Using the theories of innovation to predict industry change」の日本語訳です。

『イノベーションのジレンマ』『イノベーションへの解』に続くイノベーション三部作の最終作です。

本書は大きく二部構成になっており、第一部ではイノベーションの理論及び分析的プロセスを紹介しています。
第二部では、第一部で紹介した理論とプロセスを用いて、実際に5つの業界(教育、航空、半導体、医療、通信)と海外のイノベーションについてケーススタディ分析を行っています。

2.本書の3つのポイント

ポイント(1) 世の中には3種類の顧客が存在する。

本書では、世の中の顧客集団は以下の3種類に分類できるとしています。
1) 無消費者 
製品を消費していない潜在顧客や、製品を不便な環境で消費している顧客。
2) 満たされない顧客 
製品を消費しているが、ニーズが満たされていない顧客。
3) 過剰満足の顧客 
製品を消費しているが、ニーズが必要以上に満たされている顧客

この3つの顧客に対してそれぞれ独自の事業機会があり、企業がどの顧客を狙っているかを知ることで業界構造の変化の兆しを知ることができます。

本書では、一流校のMBA教育と企業内大学を引き合いに出し、上記のそれぞれの顧客に対するアプローチを探っています。

ポイント(2) 剣と盾を装備せよ!

既存の大企業とベンチャー企業の勝負の行方は、2つの「非対称性」の兆候によって予見することができます。

1つ目は、「非対称的な動機づけ」です。
これはベンチャーには魅力的に思われても、既存企業には魅力的に思えない市場や顧客が存在する時に現れます。
この非対称性はベンチャー企業を既存企業の反撃から身を守る“盾”となってくれます。

そして2つ目は、「非対称的なスキル」です。
これはある企業にはできて、ある企業にはできないこと、という概念で、攻撃に使う“剣”になります。

本書では、航空機業界における、エアボス社とボーイング社という”巨人”に、リージョナルジェット(地域間輸送用旅客機)という武器で挑み、勝利をあげたエンブラエル社とボンバルディア社を取り上げています。

ポイント(3) アメリカにできて、日本にできない理由。

アメリカでは、企業のマネージャーが破壊的な技術やアイデアを携えて企業を去り、資金を調達して自ら破壊的イノベーションによる攻撃をしかける。あるいはチャンスを察知した起業家が資金を調達し、破壊的イノベーションの攻撃をしかける。破壊的企業が既存企業になり、成長が止まったら、また同じことがくり返される。アメリカ経済ではこのサイクルが何度となく続いていく。
「第九章 海外のイノベーション」293頁

上記のようなサイクルを、本書では「破壊の輪」と呼んでいます。

アメリカは破壊の輪に乗って上手く前進しているため、経済成長の大幅な鈍化が起こらずマクロ経済の成長が促されているのに対し、日本はそれができなかったため、1990年代以降の経済は停滞気味であると、本書では説明されています。

破壊の輪を動かす要因の一つに「流動的な人材市場」が挙げられていますが、日本の硬直的な労働市場は破壊の輪を機能不全に陥らせているのです。

感想

オススメ度 : ★★★☆☆☆

イノベーションシリーズの集大成ということもあり、全く新しく斬新な概念はほとんどないため、ややインパクトには欠けますが、前作までに出てきた概念をどのように現実の世界に落とし込むことができるのかを深堀りするための本だと思います。

欠点として、本書では深く切り込む対象業界として「情報通信業界」を選定していますが、如何せんこの業界の背景を理解するのに苦労します。

補完的な位置付けとして出てくる航空、医療、半導体、教育業界のケーススタディはわかりやすいのですが、メイントピックの情報通信業界の背景が複雑なせいで、特にこの業界に多くのページを割いている後半部はやや読みづらいです。

イノベーションの最終解 (ハーバード・ビジネス・セレクション)

イノベーションの最終解 (ハーバード・ビジネス・セレクション)

  • クレイトン・M・クリステンセン,スコット・D・アンソニー,エリック・A・ロス

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