蜃気楼の先にある、たゆたう悠久の記憶

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海うそ

梨木果歩による、新たな物語り―喪失する歴史、ひとの記憶、信仰、自然の美しさ

昭和初期、南九州の離島を舞台に、若き人文地理学の研究者が
調査に訪れるところから、物語は始まる

繊細な日本語が織りなす、表現の極致

[ 「山の端から十三夜の月が上がっていた。月はしっとりと深い軍条の夜空の、その一角のみをおぼろに霞めて、出て来た山の黒々とした稜線から下をひときわ闇濃くしていた」  |本文冒頭より、引用| ]]

昭和初期を舞台に、廃仏毀釈の動きの最中、消えたかのように見えるが、しかし渾然とそこに「在る」ものの存在

「色即是空」の言葉が示す、日本にかつて在った、確かな神の息吹
万物は流転し、少しもとどまり、淀むことはない
日々、刻々と姿を変える事象
ゆえに、永遠に続く苦しみもない

静かに降り積もる喪失感

時間の流れとともに、変わる風景・自然・ひとの記憶
それらは失われたのではなく、自己の奥底に堆積していく
かけがえのないもの

感想

日本語の表現が緻密かつ、大変素晴らしい。
言葉の奥ゆかしさ、静謐さが匂い立ってくるようである。

著者の作品は既刊すべて読了しているが、
『家守綺譚 』『丹生都比売 梨木香歩作品集』の作品が好きな方におかれては、
表現のリズムが類似しているため読みやすく、
本作もきっと満喫できるのでは、と思う。

読了後にお勧めしたい次の書籍としては……
本作の時代設定が昭和初期、廃仏毀釈の動き等にちなみ、
京極夏彦氏の「京極堂シリーズ」(ミステリー)も、同様の時代設定になるため
読みやすいかもしれない。

海うそ

海うそ

  • 梨木 香歩

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