イノベーションを起こすには”発想力”ではなく”理論”が必要!

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イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press)

1.背景・要約

ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるクレイトン・クリステンセンと当時コンサルティング会社デロイトのディレクターであったマイケル・レイナーが2003年に上梓した「The Innovator’s Solution」の日本語訳です。

前作「イノベーションのジレンマ」が破壊的イノベーションの“脅威”を論じていたのに対して、本書では破壊的イノベーションを“機会”として捉え、どのようにイノベーションをマネジメントしていくかに焦点を当てています。

「イノベーション」「マーケティング理論」「組織論」「経営戦略論」「マネジメント」といった経営学の重要テーマがてんこ盛りの内容になっております。

2.本書の3つのポイント

ポイント(1) 市場からはじかれている「無消費者」に売り込め!

本書では、従来品よりはるかに手頃で使いやすい製品を開発し、今まで消費者でなかった人をターゲットにする破壊的イノベーションを「新市場型破壊」と名付けています。

このイノベーションは既存主要顧客を抱える既存企業と闘うのではなく、消費のない状況(無消費)に対抗するものです。
つまり、主要企業が複雑で高価な製品を開発し、上位の主要顧客の要求を満たしている一方で、それらを使うことができずに虐げられている人々(消費者にすらなれていない人々)をターゲットにするのです。

本書ではエアコン産業が一例として挙げられています。
中国では、消費電力が大きく高価であるエアコンが平均的な家庭の財力や狭いアパートになじまないために、数百人もの住宅用エアコンの無消費者がいます。
この無消費者に対して、狭いアパートにも難なく取りつけられ、シンプルな機能のみ備えた低価格なエアコンは、破壊的製品になりうるといえます。

ポイント(2) 優秀かどうかは重要ではない。重要なのは経験しているかどうかである。

本書では、「コミュニケーション能力が高い」「人を扱う能力に長けている」「成果を出してきた」という観点で新事業のマネージャーを人選すると失敗すると説明しています。

重要な観点は、候補者が過去にどんな問題に取り組んできたかというものであり、問題解決に成功したかどうかはあまり重要ではなく、問題に対処するためのスキルを養ったかどうかが大切だといいます。

この考え方には大いには同意します。
「あいついは出来るヤツだ」というのは主観が混ざっており、ある人の資質はそれを評価する人によってコロコロ変わるのであまりあてになりません。

経験は客観的な事実です。こちらの方がよっぽど信頼できる評価基準だと思います。

ポイント(3) 緻密な戦略がイノベーションを殺す。

本書では、戦略策定の二つのプロセスについて論じており、一つは「意図的戦略」と呼ばれるもので、市場や顧客、競合の徹底分析を基盤とする意図的な決定です。

もう一つは「創発的戦略」と呼ばれるもので、意図的に行うというよりは各従業員が日常的に組織の内部で下している決定の積み重ねです。

新規事業の初期段階では「創発的戦略」に基づき、何が有効で何が有効でないか創発的な事象から学んで都度修正していくプロセスが必要です。
そして、ひとたび有効なパターンが読みとることができれば、「意図的戦略」に基づき、一気に駆け上がるために投資を集中させる必要があります。

大企業のエリートほど「具体的な数字できちんと示せ」といいますが、これは「意図的戦略」の考え方であり、これを新規事業の初期段階で適用させようとするとイノベーションの可能性を潰します。

感想

3.総評 
オススメ度 : ★★★★★★

斬新なコンセプトが数多く盛り込まれているため、かなり読み応えがあります。
まさに監修者解説にあるように「自宅で読めるハーバード・ビジネス・スクールの精髄」だといえます。

前作「イノベーションのジレンマ」での概念も再登場し(全く同じ図が使われていたりします)、前作での概念は本書でもきちんと説明しているため、良い復習にもなります。

本書で論じられているイノベーションの理論体系は、大企業会社員視点でも、ベンチャー起業家視点でも、投資家視点でも活用できる内容です。

特に第七章~第九章はわかりやすく実践的であり、何度でも読み返す価値があるかと思います。
(ただ、「第五章 事業範囲を適切に定める」はかなり難解でした。)

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