「自己実現」や「幸福」を求めるような姿勢、「自分中心の人生観」こそが「むなしさ」を生む元凶である。

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<むなしさ>の心理学 (講談社現代新書)

【フランクル心理学によるむなしさ克服のヒント】

 人の欲望には際限がなく「あれがしたい」「これがしたい」と自分の欲望や願望で生きている人は、満たした瞬間にすぐに必ず次の欲望が生まれてどこまでいっても心の底から満たさることはない(「幸福のパラドックス」)。フランクルは「自己実現」や「幸福」を求めるようなこの姿勢、「自分中心の人生観」こそが「むなしさ」を生む元凶と考えている。
 逆に「あなたは何をしたいか」ではなく、「あなたはこの人生で何を求められているか」を考える。「何かや誰かのために、あなたのできることは何があるか」を問いかけるのは、「人生」中心、「意味」中心の人生観であり、むなしさ克服の原理足りえる。

【ほんとうの「癒し」とは】

 フランクルによれば、ほんとうの「癒し」は、自分のことを必要とする「何か」や「誰か」とのかかわり合いの中で、はじめて可能になるものである。
 人間の心は、ひとを愛することで初めて癒されていく。なすべきことをなしていく中で、癒されていくのである。

【「意味」発見の手がかりとなる三つの価値観】

<創造価値>

 アウシュビッツ収容所で処女作の原稿を奪われたフランクルが高熱にうなされながらも、速記の記号で原稿を再生した。「自分の学説を世に問うまでは死ぬに死にきれない」という執念がフランクルの意欲を掻き立てた。
 大切なのはどんな仕事をしているかではなく、自分に与えられた仕事を全うすること。例えば、洋服の販売員であれば、客にあった服装を探すことで「自分の人生を演出する楽しさ」を伝えることが出来る。

<体験価値>

 自然や芸術の美しさを体験したり、誰かを愛することで実現される価値のことである。
 余命三か月と言われた老女がおり、ある朝、彼女が窓の外を見ると、憔悴しきっているサラリーマンたちの姿が目に映った。翌日からこの老女は、毎朝お化粧をし、外へ車椅子で看護師に出してもらいながら、サラリーマンの一人一人に「いってらっしゃい」と微笑みかけたという。すると、サラリーマンの目にも微笑みを元気が戻ってくるのが分かった。これが嬉しくて朝の挨拶は彼女の日課となり、余命は予想よりも3か月も延び、安らかな最期を迎えたという。

<態度価値>

 自分ではどうしようもない状況、変えることのできない運命に直面したとき、それに対してある態度をとることで実現される価値のことである。
 ある老医がフランクルに「妻のいない人生が孤独で生きていても仕方ない」と言ったが、フランクルは「あなたの方が先に無くなっていたらどうなっていたでしょうか。奥様はその苦しみを逃れることが出来た。この苦しみから奥様を救ったのはあなたなのです」と答えたところ、老医師は何も言わずにフランクルの手を握り締め、去って行ったという。
 ある悪性の脊髄腫瘍を患った患者が当直医であったフランクルにこう言った。「午前中の回診でわかったのですが、おそらく私は今夜で終わりだと思います。そしてどうやら死の数時間前に、苦痛を和らげるためのモルヒネを打つようにと指示がくだされているようなんです。そこで、今のうちにその注射を済ませておいてください。そうすれば、あなたの眠りを妨げずに済みますから」。フランクルは次のようなコメントをしている。人生の最期の数時間でさえ、さりげない言葉で周りの人を思いやる気持ちを失わなかった。これは、素晴らしい業績である。職業上の業績ではなく、人間としての無比の業績である。

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