全人類がGoogleに支配される日がくる。

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AIの衝撃 人工知能は人類の敵か (講談社現代新書)

1.背景・要約

現在KDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学員大学客員准教授をしている小林雅一氏の著書です。

AI(人工知能)を取り巻くIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ活用、次世代ロボットなどの研究開発の歴史からビジネス界及び学界における最新動向まで幅広く扱っている本です。

現在欧米の大学でどのような研究が進められているのか、海外の次世代ベンチャーがどのような動きをしているのか、GoogleやAppleなどの米大手企業がどのようなAIに関わる企業戦略(研究開発、M&A)を取っているかなどを具体的に説明しています。

2.本書の3つのポイント

ポイント(1) 料理人の仕事はロボットに奪われる。

オックスフォード大学の研究者が、「今後10~20年以内にAIを搭載したコンピューターやロボットに奪われそうな職種」を調査した論文を2013年9月に発表しました。

この論文での調査では、料理人の仕事がコンピューターに奪われる確率は96%という結果になりました。

従来は、機械が行える仕事は単純な事務処理作業のような定型的な仕事だけで、料理人のような注意深い観察や器用な手先を必要とする非定形的な仕事は機械には不向きと考えられていました。

しかし、従来の機械が人間がインプットしたルールに基づいて動いていたのに対し、AIを搭載したコンピューターやロボットは人からルールを教わるのではなく、取り付けられたセンサーから取得した大量のデータを解析して、自力で考えることができるのです。

要は「匠の技」も突き詰めればすべてデータといえるため、コンピューターによる処理が可能なのです。

ポイント(2) 全人類がGoogleに支配される日がくる。

GoogleはもともとAIに強い企業(例えば、ウェブサイトの検索結果表示などにはAIと類似の技術が使われています)でしたが、ここ最近は次世代ロボットを開発しているベンチャー企業を次々に買収しています。

Googleが本当にやりたいことは何でしょうか?

人々の生活を便利にするという目的も確かにあるのですが、その背後にあるさらに大きな最終目的は、AIを搭載した次世代ロボットを「情報端末」として利用し、個々の消費者の嗜好や行動パターンをビッグデータとして収集し、それを分析することでマーケティングや自社の製品開発に生かすことなのです。

今や私たちの生活には機械が溢れていますが、あらゆる機械がAIを搭載した次世代ロボットにとって代わられることで、それに触れる私たちのあらゆる行動パターンがデータ化されGoogleに吸い上げられるかもしれないのです。

ポイント(3) 人間の創造性とは結局はコンピューターの機能と同じものである。

私たち人間の創造性とはゼロから何かを生み出すことでありません。
多くの過去の経験や情報に基づいてその中から全く別のものだと思われるものをつなぎ合わせて新しいものを創造します。

実は未来のコンピューターがやろうとしていることはこれと全く同じことなのです。大量のデータを蓄積させ、その中から自ら関連性を導き出す機能を備えているのが人工知能なのです。

米国の大学教授兼音楽家であるデビット・コープという人が、多数の有名な音楽家の曲をデータ化して取り込んで作曲するソフト(「EMI」というソフト)を開発しました。

ある音楽イベントで、その作曲ソフトが作ったとは知らせずに上演したら観客席は拍手喝采で、事前にそれを知らせたうえで上演したら演奏後も会場は静まり返っていたそうです。

感想

オススメ度 : ★★★★★★

著者は本書の最後で持論として、人間に残された最後の砦は知性ではなく、ある能力において自分より優れた存在を創造し、それを受け入れる先見性と懐の深さであると述べています。

とかく人間は新しい何かに出会うとそれを批判的に捉えてしまいますが(身近な例では中高年のスマホ批判)、新しいものの有効性と危険性ときちんと向き合い、それを排除することなく、受け入れていくことで人類は発展してきました。

人工知能というと理系的な側面が強い難しいテーマでもありますが、本書は非常に読みやすく、人工知能の希望と絶望の両面をしっかり映し出していると思います。
人工知能のことを知るならまず最初に読むべき本だと思います。

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