“仕事をもっと生産的にしたいエリート”のための本

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ドラッカー名著集8 ポスト資本主義社会

1.背景・要約

1993年、社会生態学者としてのドラッカーが83歳の時に上梓した「Post-Capital Society」の日本語訳です。

資本主義の転換期にある現代を、ポスト資本主義社会(資本主義でも社会主義でもない)と名づけ、社会/政治/知識の3つの領域での転換を論じています。

社会については、資源の三大要素がヒト・モノ・カネであった資本主義社会から、支配力をもつ資源が知識となった知識社会への移行と、その知識を生産的にするための組織社会の到来について説明しています。

政治については、国民国家からメガステイト(巨大国家)への移行と、グローバリズム、リージョナリズム、トライバリズムについて説明しています。

知識については、知識の経済学や生産性の説明と「教養ある人間とは?」という問いを提起しています。

2.本書の3つのポイント

ポイント(1) テニスのダブルス型チームが最強のチームである。

ドラッカーは本書で知識の生産性を向上させる方法として3つのチームを紹介しています。

1) 野球型チーム
ポジションは固定で、全員が一体化して動くのではなく独立している。
2) サッカー型チーム
ポジションは固定だが、相互に調整しつつチームとして動く。
3) テニスのダブルス型チーム
優先すべきポジションは持つが固定ではなく、互いの強みを生かし、弱みをカバーする。

このうち、テニスのダブルス型のチームが最強だとしています。弱みをカバーすることで一人ひとりの仕事ぶりの総計を超える仕事ぶりを発揮させることができるそうです。

ポイント(2) オフィスの掃除やコピー取りは新人・若手の仕事ではない。

本書では、新しい時代の主役となる知識労働者の生産性向上が大きなテーマになっています。

“看護師の仕事は患者の世話である。しかし、あらゆる調査が示しているように、彼らは時間の4分の3を患者の世話に関係のない仕事、例えば書類仕事にとられている。・・・技術者も時間の半分は、本来の仕事に関係のない会議への出席や報告書の作成に取られている。”
「第4章 生産性」115頁

ドラッカーは生産性を向上させるには雑事の排除が最高の方途だとし、そういった仕事はアウトソーシングすべきと説いています。

日本の企業では、特に雑事は新人や若手の仕事だと考えられる傾向が強いです。彼らは雑事をするために会社へ入ったわけでもないのに、「こういうのは新人の仕事だから」と押し付けられます。挙句の果てに「こういう雑事に対する姿勢で仕事ができる奴かどうかがわかる」とわけのわからない理屈まで押しつけられます。

日本の若いエンジニアがコピー取りや飲み会の幹事に奔走している間に、海外の優秀なエンジニアは少しでも多くの設計図を描いているかもしれません。そしてそれがいずれ大きな差になるのです。

ポイント(3) 教養ある人間とは?

ドラッカーは「多様な専門知識を理解する能力をもつ者が教養ある人間である」としています。

「あれ?ドラッカーって強みのある特定の専門領域に集中できる人が成果をあげられるって言ってなかった?」と思った方もいるかもしれません。

それはその通りなのですが、上記の教養ある人間の定義でポイントとなるのは、“理解する”という点です。
自らが強みを持つある特定分野の知識に関しては“応用”することが求められますが、それ以外の多様な専門知識については、“理解”することが求められるというわけです。

感想

オススメ度 : ★★★☆☆☆

本書は経営学というより社会生態学(ドラッカーの造語)の色合いが強く、同じ色合いを持つ1969年に刊行された『断絶の時代』と合わせて読むとより楽しめるのではないかと思います。

ドラッカーはかつて1939年に発表した処女作に『「経済人」の終わり』というタイトルをつけましたが、本書を読むと、現代の転換期は『「知識人」のはじまり』といった言葉が相応しいような気がします。

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