“停滞する平凡なサラリーマン”のための本

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イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)

1.背景・要約

1985年、ピーター・ドラッカーが75歳の時に上梓した「Innovation and Entrepreneurship」の日本語訳です。

イノベーションと企業家精神は独創的なアイデアを持ったある一握りの人間のものではなく、誰でもそれを体系的に学ぶことで実行することができることを論じている本です。

ポイントとなるのは“起業家精神”ではなく“企業家精神”という点です。
「会社を辞めてリスクをとって自ら新しい会社を立ち上げる」という意味ではなく、文字通り「新しい事業を企てる」ことを意味しています。
そのため、企業家精神は停滞しがちな大企業や行政機関で働く人にとってこそ重要なものといえるのです。

本書の構成は、第Ⅰ部:イノベーションの方法、第Ⅱ部:企業家精神、第Ⅲ部:企業家戦略の3部に分かれています。

2.本書の3つのポイント

ポイント(1) 臆病者がイノベーションを起こす。

イノベーションを起こす人は進んでリスクをとっていると考えがちですが、そうではないのです。

イノベーションに成功し世界的な事業に育て上げた有名な投資家の言葉が本書で紹介されています。

“「私はみなさんの発言にとまどっています。私自身、大勢の企業家やイノベーターを知っているつもりですが、いままでいわゆる企業家的な人には会ったことがありません。私が知っている成功した人たちの共通点はただ一つ、それはリスクを冒さないということです。」”
「第11章 イノベーションの原理」163頁

イノベーションを起こす人は変化を当然とみなすのであってリスクを当然とはみなしません。
但し、変化には必ずリスクが伴うこともわかっています。だからこそ、絶対に冒してはならないリスクについては徹底的に分析し、最小限にしようと努力するのです。

イノベーターは楽観主義者ではありません。「あれも不安だ。これも不安だ。」と臆病になりながらも前に進みます。
他方で、何もしないただの臆病者との違いは前に進むという点です。ただの臆病者は不安になって逃げ出しますが、成功する臆病者は不安ながらも前に進み、変化を受け入れます。

ポイント(2) 企業家精神とは、生まれつきのものでも創造でもない。

ドラッカーは「企業家精神は仕事である」と結論づけています。
仕事であるから、生まれつきの性格に影響されるものでもなく、勘に頼らざるを得ない奇抜なアイデアを生み出すことでもないわけです。

そして、仕事であるから組織の中で企業家的なマネジメントを仕組みとして構築しなければいけないとしています。
ブレイン・ストーミングと題して会議を頻繁に行い、独創的なアイデアが出るのを待っているだけでは、構築された継続性のある仕組みとはいえないわけです。

ポイント(3) 後だしジャンケンで勝つ。

本書の中で紹介されている企業家戦略である「ゲリラ戦略」の一つとして「創造的模倣戦略」というものがあります。

これは誰かが新しいものを完成間近までつくりあげるのを持ってから仕事にとりかかり、先駆者が満たせなかった顧客のニーズを満たす形に仕上げることで市場を奪う、というリスクの小さい戦略です。

アップルは製品中心の考え方のもとで革新的なパソコンを世に送り出しましたが、そのアップルのアイデアをIBMが模倣しました。IBMは何ら革新的な技術を駆使したわけではないですが、顧客目線で買いやすく使いやすいパソコンを作り、アップルのリーダーシップを奪い市場を手に入れました。

感想

オススメ度 : ★★★★★☆

イノベーションや企業家精神を通説とは違った角度で捉えているので、読んでいて爽快感があります。

ドラッカーの中には「平凡な者でもきちんと学びスキルを身につければ何でもできる」という考え方が根底にあり、今までの著書の中ではリーダーやトップマネジメントのあるべき姿でその持論を展開していました。
そして本書でもこの持論に従って平凡な者でもイノベーションを起こせると説いています。

本書では「既存の企業こそ、企業家としての機会をもちその責任を負っている」と書かれていますが、日本の企業で働く平凡な(と自分で感じている)サラリーマンの人にこそ読んで欲しい1冊です。

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