新幹線が置かれている現状を知る。

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鉄道の未来学 角川oneテーマ21 [kindle版]

新幹線の費用

費用負担は誰が行っているか。

  • 莫大な額に上る新幹線の建設工事はいったい誰が負担しているのだろうか。実は開業後に所有者となるJR北海道、JR東日本、JR西日本の3社とも、いまのところは支払っていない。
  • そもそもJR北海道は2008(平成20)年度に50億1502万3000円の当期損失を計上し、発足時に政府から与えられた6822億円の経営安定基金を運用して赤字を補填(ほてん)しているありさまだ。
  • 結局のところ、北海道新幹線と北陸新幹線の建設工事費は国と沿線の地方自治体とで分担して支払っている。
  • 北海道新幹線や北陸新幹線をはじめ、九州新幹線といった整備新幹線はJR各社の負担なしに建設工事が行われ、開業後は新幹線建設の受益に伴う範囲を限度とした貸付料を鉄道・運輸機構に支払うことと定められている。さらには、新幹線の開業で利用者が減り、収益が落ち込む並行在来線を切り離してもよいという条件も付け加えられた。つまり、開業した新幹線が仮に赤字になったとしても、JR自体は損をしないという割のよい条件で鉄道事業を展開できるという次第だ。

新幹線のコスパ

  • 現在、新幹線の最高速度は時速300キロメートルである。この速度で列車が走っているのは山陽新幹線と東北新幹線だ。他の新幹線の最高速度は、東海道新幹線が時速270キロメートル、上越新幹線が時速240キロメートル、長野新幹線と九州新幹線とが時速260キロメートルである。
  • 整備新幹線の最高速度が時速260キロメートルに抑えられているのは建設工事費を節約するためである。最高速度を上げるには防音壁などを追加して防音、防振対策に努めなくてはならない。さらに、最高速度の設定に当たり、どれだけの利益が得られるかを厳密に算定して決めた結果、ほどほどの速度となったのである。

新幹線駅の需要と設置費用

  • 開業中の新幹線に駅を設置してほしいと考えている地方自治体は多い。新幹線の列車が停車すれば東京や大阪といった大都市と直結して利便性が高まり、駅周辺も発展すると予想されるからだ。これらのなかで最も熱心に誘致活動を展開しているのは相模駅だ。この駅ができれば、結構な数の利用者でにぎわいそうだ。
  • 問題はJR東海の対応と設置費用だ。JR東海は東海道新幹線の輸送力が飽和状態にあり、相模駅の開設で増える新たな利用客を受け入れる余地はいまのところないと回答している。

新幹線の料金設定

デフレ傾向が反映されない

  • デフレによって営業原価が下がっているのも確か。ならば運賃は無理としても料金を下げてもらえないかと考えるのも人情だ。しかし、残念ながら新幹線の料金の値下げは当面は行われないだろう。
  • JR各社とも既存の新幹線を買い取ったために高額な返済に追われていたり、あるいは実質的に儲けをすべて鉄道・運輸機構に搾り取られる整備新幹線を所有しているため、それどころではないのだ。

料金を下げるにはライバルが必要

  • 新幹線の料金を下げてもらうには、他の交通機関との競争が存在しなければならない。各新幹線の状況を見ると、他の交通機関と激しい競争を繰り広げているのは山陽新幹線と新在直通の秋田新幹線だけで、あとは新幹線が圧勝している。このような状況では運賃や料金は下がらないだろう。
  • 航空機は新幹線の最も手ごわいライバルである。しかも、航空運賃はずいぶん下がっている。ロー・コスト・キャリア(LCC)という格安の航空会社が国内線に就航することが発表され、羽田空港と関西国際空港との間が1万円未満、下手をすれば数千円程度で利用できる日が訪れるかもしれない。

航空機と新幹線の比較

  • 東京と大阪との間での東海道新幹線と航空機との利用客の割合は2007(平成19)年度に東海道新幹線8対航空機2であった。筆者はLCCが日本に定着し、最終的に東海道新幹線のシェアは65パーセント程度まで落ち込むと見ている。
  • LCCの運賃は航空券を90日前までに購入すれば2000円、一カ月前までで5000円、1週間前まで8000円、前日まででも1万円といったところか。これでは東海道新幹線の魅力は色あせてしまう。加えて東京も大阪も年間を通して気候に恵まれていて航空機が定時に発着できる可能性が高い。むしろ、冬季に関ヶ原付近の積雪で遅れる東海道新幹線のほうが不利だと言えよう。
  • ここまで記すと、筆者は新幹線が航空機との競争に負けてしまえばよいと考えているととらえられるが、そうではない。新幹線がこの先も多くの利用客でにぎわうためには他の交通機関との競争が必要であり、競争を通じて新幹線は磨かれていくと信じているからだ。新幹線の運賃・料金は物価の優等生であり続けてほしい。

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