終わらないイラク戦争 イラクと福島を繋ぐ被爆と英国から学ぶべき日本加担の検証

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終わらないイラク戦争 フクシマから問い直す

 本書は2013年でイラク戦争開戦から約10年を迎え、その間2011年に3.11を経験した日本の福島県民が、被曝という健康被害の当事者となったことで「ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ、イラクは同じだ」という共通認識をイラク市民も持つようになった現実を見据えて、改めてイラク戦争を問い直すために編纂された良書である。
 各章ごとにそれぞれ、イラクに関わり10年以上活動されてきた人道支援の専門家やNGO、ジャーナリストなどが共著で名を連ねる。
 昨今の集団的自衛権を巡る安倍政権の戦争へ向かう道の抑止として、また米軍を始めとする多国籍軍とイラク政府、イスラム国(ISIS)三つ巴の戦争の現実を見据え、改めて警鐘を鳴らす上で本書を紹介しておきたい。
 ここではイラク支援ボランティアの高遠菜穂子氏と、ジャーナリストの志葉玲氏の各章を取り上げる。

人道支援の現場から福島とイラクを問い直す

 イラク市民の間では1991年の湾岸戦争後に急増した癌や白血病が、米軍の投下した劣化ウラン弾による被曝が原因だと考える人が多いという。高遠氏はイラクの高レベル汚染地帯で調査に加わり、宿に戻るたび、衣服も靴も全て洗濯して生活圏に「汚染をもちこない」という被曝防護策を身につけていた。この時のイラクでの経験が、3.11後の南相馬市に瓦礫撤去と泥出しボランティアに入った時活きたと述懐している。だが、高遠氏は「イラクで劣化ウラン弾が当たった『点』ではなく、放射性物質が降り注いだ『面』としての汚染は福島の方がずっと深刻であると思わざるを得なかった」との見解を示し、イラクから帰国後、劣化ウラン弾に詳しい医師や専門家との対話から「放射線核種が違うのでイラクと福島を単純比較することはできない」と教わったという。「それでも、20年以上も内部被曝に苦しんできたイラクとの共通点と相違点の両方から学ぶものは多い」と高遠氏はイラクから福島を問い直している。

世界的なイラク戦争検証の流れから

ジャーナリストの志葉玲氏らは、英国の「イラク戦争検証委員会」によるトニー・ブレア英元首相らの証人喚問などの「公開性」を視察したことから、日本のイラク戦争加担の検証にも見習うべきことは多いとして、2009年11月に「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」を設立した。菅直人民主党政権時、2011年9月に4万1433筆の署名を集めた同団体は首相官邸に提出。
 志葉氏は①いつ、誰が、いかなる情報、判断に基づきイラク戦争支持へと政策を決定したか②国際法に対する政府判断の妥当性の問い直し③イラク戦争の戦費を日本が支えたのではという疑惑④自衛隊イラク派遣の是非⑤在日米軍とイラク戦争の関係など重要論点を本書で整理している。
鳩山・菅民主党政権では、国会質疑で度々イラク戦争の検証の必要性が答弁されたが、自民党が政権に返り咲いたことでさらに政府に検証を求めていくことが困難になったと志葉氏は指摘する。
 2012年末12月21日に外務省の「対イラク武力行使に関する我が国の対応」なるものが「検証結果」として突如A4の4ページの要約のみが公表された。だが、到底「イラク戦争への日本の対応を検証した」とは言えないと志葉氏は斬り捨てる。イラク戦争開戦前から、英ダウニングストリートでの反戦デモ参加者10万人以上という草の根からメディア、政治家ら様々な立場の人が粘り強く声を上げ続けたことで検証が実現したことからも、自民党政権が「集団的自衛権の行使」の容認や改憲について露骨に動いている今、イラク戦争検証の重要性が増しているのだと志葉氏は呼びかける。

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