現代の若者を不幸だと決めつけるな「絶望の国の幸福な若者たち」

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絶望の国の幸福な若者たち

概要

世代間格差など、一般的に「現代の若者は不幸」という見方がある。
だが、当の20代は、自分たちを幸せと感じる人の割合が過去最高という。

若者のリアリティを共有する26歳の著者が、世代論の構造や若者の満足感の源泉を解き明かす。
著者と佐藤健との対談も収録。

「若者」の誕生と終焉

◆今で言う「若者」という概念が一般化したのは、実は1960年代後半と新しい。
 ・一億総中流で同年代がほぼ均質になってはじめて、世代論が意味を持った
 ・いまや同世代でもひとくくりにできない時代。現象を強引に「若者」にこじつけないように

◆若者批判の論点は1930年ごろから変わっていない。
 ・若者を異質な他者とする見方や、都合のいい協力者とする見方など

ムラムラする若者たち

◆巷で言われる「若者の~離れ」を検証する。

 ・社会志向の割合は、調査以来で最高値。社会貢献意識は83年の2倍。
 ・ボランティア志向は70年代から横ばい
 ・政治に関心のある比率は90年代後半より増。ただ投票率は他の世代より下
 ・20代の出国率は97年が24.1%で2010年は19.4%。それでも2割近い
 ・留学者のピークは最近で2004年。比率でみると実はバブル期の2倍
 ・今の地域に住み続けたい人(地元志向)は増加傾向
 ・自動車や耐久消費財について購入関心が薄れているのは事実。
  だが、ファッションや書籍、コスメやゲームの購入意欲は高い。
  前者が過大喧伝されているのでは

 以上、内向きかもしれないが、言われるほど内向きでは決してない。

◆生活に満足している20代は、ここ40年で最高値。
 ・一方で「不安を感じる」割合も増加中。未来に希望がないとする比率も高い。この矛盾は何か?
 ・大澤真幸氏の分析を援用すれば、将来に希望がないとき、人は現状に幸せを感じる
 ・コンサマトリー(自己充足的)もキーワード。「今ここ」が幸せであれば満足できる
 ・「仲間といるときに充実する」数値が高い。これが内向きと誤解されるのでは

◆それぞれの仲間内(=村々)で生きる若者は一見閉塞しているように見えるが、
同時に社会参加のパワーも内包している(=ムラムラしている)。

崩壊する「日本」?

◆W杯で、なぜ会ったこともない日本人の集団を必死に応援できるのか。
 ・それは「ナショナリズム」と言う仕掛けにある。
  地域差・身分差のある集団は戦争に弱い、という欠点を消すべく国家が推進
 ・1940年ごろのラジオの普及と戦争により、戦後も続く強固な体制に

◆グローバリゼーションやネットの発達で、ナショナリズムの魔法が解けつつある。
 ・もう国家はいらない、という考えもある(渡邉美樹氏、堀江貴文氏ら)
 ・ナショナリズム最大の欠点は、戦争という「殺人事件」へのハードルが低くなること。
  「W杯応援だけのナショナリズム」ぐらいが実は好ましい

「日本」のために立ち上がる若者たち

◆それでもデモを通じて社会を変えようという若者がいる。
 ・現代のデモはカジュアル化。参加者も意識的には右翼・左翼と距離を置く
 ・ネットでデモ情報を見て参加する。日常を維持しつつ、緩やかにつながっている

◆社会との回路をうまく設定すれば、若者は動き出す。
 ・モラルエコノミーのような独自規範や、アニメ規制などコンサマトリーの侵害も契機に
 ・みんなが社会的・公共的である必要はない。革命即今よりいい社会、ではない

東日本大震災と「想定内」の若者たち

◆天災という非日常が、普段意識しない「日本」の存在を浮き彫りにした。
 ・ボランティアや募金など、多くの若者が活動を行った。
  ムラムラした若者が社会にコミットしたということ

◆「3・11で世界は変わった」という言説にはリアリティを感じない。
 ・日本中が被災地、ではない。阪神大震災・オウムの95年後も激変はなかった

絶望の国の幸福な若者たち

◆社会保障から見ると、孫世代は祖父世代より1億円損をする計算。
 が、単純に「世代間格差」という見方でいいのか。
 ・若者が貧困化すると、困るのはむしろ企業や国家。世代内格差は高齢者同士のほうが大きい

◆絶望的状況でなぜ若者が幸せでいられるのか。「経済」「承認」の2点から検討する。
 ・若いうちは収入格差が少ない。親と同居し、病気も少なく、貧困が顕在化しない
 ・むしろ直面するのは「承認」問題。未来の貧しさより今の寂しさこそ耐え難い。
  承認してくれるコミュニティがあれば不安は軽減される

◆皮肉にも、格差が広がったほうが人は幸せかもしれない。
 ・中国の農民工は生活水準が低いにもかかわらず満足度が高い。
  身の丈にあった幸せを見つけて「村々と」生きていくのもありだ
 ・未来は暗いが、社会が急変する可能性は少ない。問題も多いが喫緊の不満も無い。
  そんな中で生きていくのだ。選択肢はいろいろある

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