「地方消滅」増田レポートの真意は、地方切捨てを正当化することでは?

1847views折笠 隆折笠 隆

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地方消滅の罠: 「増田レポート」と人口減少社会の正体 (ちくま新書 1100)

896の消滅可能性都市を指摘した通称「増田レポート」は、国民やメディアに“地方切り捨て止むなし”と思い込ませる危うさをはらむ。つまり消滅はもう不可避だから、過疎地に見切りをつけて都市に注力しよう(=選択と集中)と。おかしい。消滅は決まった訳ではない。本書では批判的に検討し、異なる選択肢を探る。

子供を生まないのは、経済的な問題か?

増田レポートは、少子化は子育て世代の経済・雇用環境の不安と見るが、そう単純ではない。

  • 失業率が最悪である沖縄の出生率は最高では?
  • 今の人口減は、子育て支援レベルでは焼け石に水の深刻な問題だと認識しているのか

少子化は、社会全体の人口再生産能力の衰えによるもの。

  • 金があっても、時間にゆとりがなく将来が見えなければ、子育てや結婚の意欲が失われる
  • 「町が消える!」というショック療法は、将来の不安を煽るため逆効果になるかも

地方の消滅を促す圧力がある

さまざまな政策を負のメッセージと受け取り、住民自ら地域再興をあきらめてしまう動きが。

  • 学校の統廃合やインフラの縮小撤退は、「当該地域に未来がない」という無言の圧力に
  • 一関市のILC誘致による復興策は、原発誘致による地域振興策と構造が酷似している。警戒を

「勝ち組に回らねば切り捨てられる」という住民の不安につけこんだ、平成の大合併も効果なし。

  • すると今度は「お前たちの町は消える」だ。いいかげんにしてくれ

小さな地域は、実はどこも頑張っている。心理戦に屈してはいけない。

増田レポートの主張「選択と集中」の恐ろしさ

そもそも、残すべき地方を誰かが選別するって、おかしくないか?

  • この発想を認めると、次は切り捨てるべき産業や企業、人物は…などと選別思考が広がってしまう
  • 過剰に膨張した太平洋ベルト地帯こそスリム化すべき、という考えもある

守るべきは住民のはずなのに、いつの間にか「国の経済力を守る」話にすり替わっている。

  • 一部の国民を切り捨てないと維持できないような経済繁栄に、何の意味がある?

「選択と集中」しか手段がないと思い込むな

自治体の多様性を認めた上での「共生」へ舵を切ろう。

  • 「選択と集中」を支えるのはトップダウン的システム。これに抗うため、住民も自治意識を高めよ

「ふるさと回帰」に人口還流の萌芽を見る

キーワードは「循環」。都市部から地方へ、人の流れが自発的に生じるようになればいい。

  • 団塊のU・Iターンに加え、若者(平成世代)の地方居住志向が強まっている
  • 地方が都市部の過剰人口の受け皿になることで、共存できるのではないか

多様性を認め合う、新しいルールを作ろう

例えば、今井照福島大教授の提案する住民票の二重登録化はユニーク。

  • 人は複数の地域に関わりながら生きている。住所が一つというのは、実は不自然なのだ
  • 地域同士の人の流れが可視化されれば、単純な人口では見えなかった過疎地の潜在能力を発見できる

住民がもうひとつの所属を決めることで、都市・農村の協働参画意識が生まれるのでは。

  • 複数自治体にまたがった、より実生活に即した政策立案も必要になるはず

現在の問題は、経済優先の広域人口移動(都市部強化)によるもの。「選択と集中」はその路線を踏襲するわけだから、解決策にはならない。中心から地方への人口還流を作り出し共存・共栄する方が、持続可能なシステムとして望ましいはずだ。

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