”初音ミク”は奇跡的なタイミングで生まれた『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?(2014/4/8)』

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初音ミクはなぜ世界を変えたのか?

柴那典(しばとものり)

1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンにて『ROCKIN'ON JAPAN』『BUZZ』『rockin'on』の編集に携わり、その後独立。本書が初の単行本となる。

これまで、ボーカロイドのキャラクター文化としての側面を語る論は沢山ありました。アイドル論の中で初音ミクを語る人もいました。アニメやゲームミュージック、同人文化の背景が語られることも一般的でした。それらが間違っているとは思いません。それでも、ボーカロイドを巡る状況がこれだけ大きなものになっているのに、それを音楽的な側面から語った論があまりに少なかったように感じたのです。従来の音楽雑誌や音楽メディアが、音楽史的な参照点を踏まえてボーカロイドの現象を語ることを怠っているように思えた。それがこの本の執筆の動機であります。

序章 僕らはサード・サマー・オブ・ラヴの時代を生きていた

  • 2007年は、CDの売上が全盛期の半分まで落ち込み、「誰が音楽を殺したのか」という犯人探しまで行われ、音楽業界は悲観的な空気に包まれていた。
  • 67年のアメリカ西海岸で興ったヒッピーカルチャー的なロック運動をサマー・オブ・ラヴという。カウンターカルチャーとして新しい文化を生み出し、社会現象となった、熱気に満ちた時期を指す言葉。
  • その二回目は、20年後の87年、イギリスでテクノやアシッドハウスなどのクラブミュージックの勃興である。
  • そして今目撃している、07年からのインターネット上での初音ミク現象を、三度目のサマー・オブ・ラヴとして位置づけられないだろうか。

第一章 初音ミクが生まれるまで

  • 80年代後半は、シンセサイザーやサンプラーが安価で手に入るようになり、MIDIとDTMを用いた音楽制作がアマチュアに開かれた時代だった。
  • その精神は、デジタルシンセの銘器DX7のデザインが、初音ミクのデザインの元になったところに受け継がれている。

第五章 「現象」はなぜ生まれたか

  • youtubeやニコニコ動画のような動画共有サイトが登場。また著作権違反のアップロードが徹底的に権利者削除された→新しいものへの欲求。
  • もともと日本には、人形浄瑠璃など”非生物に魂を吹き込む”伝統があった。

第六章 電子の歌姫に「自我」が芽生えた時

  • 初めは既存曲を歌わせたり、「みんなの歌姫的ソング」が多かった。
  • しかし、07年12月の『メルト』以来、シンガーとしてのミク、「初音ミクでなく○○Pの曲」という意識で曲が作られるようになった。”歌い手”がカバーすることも一般的になった。

第七章 拡大する「遊び」が音楽産業を変えた

  • 08年には、独創的なクリエイターたちが高品質の楽曲を次々と投稿するようになった。
  • カラオケの上位ランクにVOCALOIDが入るようになり、一般に認知されるようになっていった。

第八章 インターネットアンセムの誕生

  • googleのCMに、日本代表として初音ミクの『tell your world』が使用された。
  • それは、初音ミクというキャラクターに焦点を当てたものでなく、初音ミクを通じて人々がつながりあい、創作が連鎖していく様子を描いたもの。

第十章 初音ミクと「死」の境界線

  • 13年、日本とフランスにて史上初のVOCALOIDオペラ『THE DEATH』が上演。アートとして昇華された。
  • ブームは去ってもカルチャーは死なない。初音ミクによって新しい可能性が開かれたこれから10年間は、豊かな音楽文化が穏やかに開花するだろう。
  • 感想

    私の実力不足でこの本の良いところを上手くまとめられませんでしたが、本当に良い本です。大幅にカットしてしまいましたが、初音ミクが誕生するまでの系譜としてのDTM文化、深夜ラジオを始めとするアマチュア音楽家の”遊び場”の存在、また”機械に歌を歌わせる”ことの原初の試みの数々を紹介できませんでしたので、ぜひ本書を手にとって確かめてみてください。VOCALOIDが誕生し、変容し、昇華されていく様子をリアルタイムで目撃した世代は、必読の書です。具体的な曲名もたくさん登場し、初音ミクといっても一筋縄ではいかないということがよく分かると思います。また、萌えキャラとして面白半分に(メディアなどに)取り上げられることの多かった初音ミクですが、それは本質ではなく、クリエイターの活動を誘発し、接続する”ハブ”としての機能を果たしていたことがこの書において強調されています。総括すると、大変おすすめの一冊です。

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