退屈だったけどどこにも行かなかった私の、あの頃燻っていた感情が鮮明に蘇る。

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ここは退屈迎えに来て

あらすじ

そばにいても離れていても、私の心はいつも君を呼んでいる―。都会からUターンした30歳、結婚相談所に駆け込む親友同士、売れ残りの男子としぶしぶ寝る23歳、処女喪失に奔走する女子高生…ありふれた地方都市で、どこまでも続く日常を生きる8人の女の子。居場所を求める繊細な心模様を、クールな筆致で鮮やかに描いた心潤う連作小説。

感想

私も若い頃、この本のタイトルと同じこと思っていました。
若い頃って何もかも退屈で、常に「なにか面白いことないかなー」なんて呟いてたような気がします。
だけど、実際は自分から何かを発信する気も何かをスタートさせる気もほんとは全くないんですよね。
だから、そういう自分の本心を隠すかのように、誰かが私を迎えに来てくれたら、こんな退屈な場所から抜け出せるのに。なんて独りごちてみたりしてて、今思うとほんと他力本願的な日常だったんだな。という感じです。

この物語は地方都市を舞台とした連作短編集。なのですが、いわゆる「ファスト風土」で暮らす人たちの、閉塞感と焦燥感を細やかに描いた作品となっています。

前はなーんにもないただの田舎町だった場所に、気がつけばコンビニができて、ファミレスもできて、そのうちTSUTAYAもユニクロもラウンドワンもドンキホーテもどんどん建ち並び、そして極めつけは、町中の人間を集客するような大型ショッピングモールが建つという。 今の時代こんな地方都市が全国各地にありますよね。
109(イチマルキュー)ほどではないけれど、それなりに流行の洋服だって買えるし通販だってあるし、都会なんかに行かなくたって欲しい物は手に入る。そりゃ、都会を目指さない若者が増えるわけだなー。と言う感じです。

でもやっぱり結局のところ、ここは紛れもない田舎町なわけで、周りを見渡してもどことなく洗練されていない景色と、どことなく洗練されていない人たちばかり。
そんな環境にうんざりしたりしてため息ついて、でも自分もその中の一人なんだということをふと思い出して、やっぱりまたため息ついての繰り返し。
そういう気持ち、すごくよく分かるなー。

でも、私はもうおばちゃんなので、こんな田舎から抜け出たい!ってことは、今はもう全く思わないんですが、だけど可能性を存分に秘めている若い子達は、このタイトルのような感情を募らせてるのかなー。なんて思ったりしました。
だけど「ここは退屈」だと本気で思う人って、きっと迷いなく前へ踏み出すことができるんですよね。
不満がありながらもこの場所へ留まってるってことは、やっぱりどこかで、今の現状に満足してたりするのかな。
というのが、退屈だったけどどこにも行かなかった私の感想です。
なんかあの頃の燻っていた感情が蘇って、胸がちくちくしちゃったな。

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