どこかおとぎ話のような静かに流れる時間と、じわじわくる恐怖 

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わたしを離さないで

あらすじ

私(キャシー)は、介護人をしている。まもなく、介護人をやめるつもりだが、同級生だったルースやトミーを介護する中で幼い頃を過ごした全寮制の学校のことを懐かしく思い出す。

  • モノトーンの世界
翻訳もののせいもあるのでしょうが、淡々とした文章です。
キャシーの独白、という体裁なので一つのことを話しているうちに「あ、そうそう」といった感じで、要点があっちに飛んだりこっちに飛んだりします。一応時系列にはなっているのですが、目の前でキャシーが話しているように感じられます。
なんだかよくわからないことがたくさんあるけど、彼女がそれを「当たり前のこと」として受け止めているので「説明してほしいな」とも言いづらいような感じ。

  • 恩田陸作品との類似点
どこかで似たような話を読んだな、と思い出しました。「麦の海に沈む果実」に似ています。全寮制、外の世界と隔絶した校内、先生が絶対であり、保護者(親)がほとんど出てこない、いわくありげな学生たち。淡い印象ととらえどころのない手ざわりも似ています。

  • 再読をお勧め
一度読み終わってキャシーたちの立場を理解してからの再読をお勧めします。

キャシーたちの背景がわかると、とても怖い小説になります。でも、ありえそうというかあってもおかしくない。新井素子にも同じようなシチュエーションのお話がありました。こちらは外から見ている人の視点で、子どもたちの内面まではわからなかったのですが、積み重なる死体などかなり強烈な描写もあったように記憶しています。が、「わたしを離さないで」は論理などを超越して、ただ「ありのまま」の彼ら彼女らを描いています。だからこそ、小説とはいえ「許されないことだ」と読者に訴えかける力が強いのかもしれません。

わたしを離さないで

わたしを離さないで

  • カズオイシグロ

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