読み進めるのが重苦しいタイプのミステリー&ホラー。下巻へひっぱる筆力はさすがです。

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Another(上) (角川文庫)

あらすじ

父の海外出張に伴い、母方の祖父母の家にやってきた中学3年生の榊原恒一。
母や叔母も通った夜見山北中学に転入することになるが、自然気胸を患い、クラスに入る前に入院という憂き目にあってしまう。その病院で、彼は左目に眼帯をした不思議な雰囲気をもつ少女が、人形を抱きかかえ霊安室に向かうのを見かける。彼女はクラスメイトの見崎鳴であった。が、不思議なことにクラスメイトは鳴が見えていないようだ。はたして彼女は、本当に存在しているのか?そして、この3年3組に漂うピリピリとした静かな緊張感はいったい何なのだろう。

とらえどころのない色合いが魅力でもあり、不気味でもある。

アニメや映画にもなったので、ストーリーはご存知の方もあるでしょう。
原作は、ちょっとミステリアスな青春小説、といったスタイルではじまり、真綿で首を絞められるような重苦しい雰囲気にのまれていくホラーに色合いが変わります。そして、事故ではあるが人が死に、「なぜこんな事件が起こるのか?原因と対策を探せ!」というミステリーの風味も混ざってきます。
中学3年という、もっとも多感な時期を思い出させる曖昧模糊とした読後感です。上巻では、階段を落ちたはずみに持っていた傘で頸動脈を刺してしまうという悲惨な死人が出ますが、値が噴き出すようなスプラッターな印象はありません。ヒロインである鳴の実家兼工房「夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の。」という名のとおり、黒い闇に向かってただひたすら表面上は静かに黄昏ていくのです。

論理的に謎を解いていくタイプのミステリではありません。犠牲者になる条件、というのはありますがそれも些細なこと。因果応報タイプの呪い物語でもなく、まさに理不尽な災厄に巻き込まれるという不条理な物語です。
上巻では一応、「なぜこんなことが起こるのか」は説明されていますがどうやったら終わるのか?はわからないまま。鳴の思わせぶりなつぶやきも解明されず、もやもやとしたまま終わります。ところどころに挟まれる謎めいた記述が、きっと下巻では生きてくるのでしょう。なんといっても記述の名手、綾辻氏ですからね。

死の色を醸し出す言葉選び

「榊原」という主人公の名前。「黄泉」につながる「夜見山」という地名。「ミサキ」は姓にも名にもなる、そして性別を超えるマジックワード。

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