もしも、こんな世界になってしまったら。

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殺人出産

取り扱い注意。

10人産めば、1人殺してもいい、という社会。
男でも女でも、一人を殺すために「産み人」となり、その「産み人」が人工授精をしてどんどん子ども産んで人口減少にはどめがかかる。
「産み人」がセンターに預けた子どもを引き取って育てることが主流になり、出産する人は少なくなり、自分の子どもがほしいと思っても、自然妊娠ではなく、人工授精によって子どもを授かることが一般的になる未来。
それは、歪んでいて、ぞっとします。
今、人工授精で産まれてくる子どもの割合はどんどん増えています。
男性に人工の子宮を取り付けて出産する研究が成功した、という海外の話があり、人口減少で地方の街が消滅するから、早急な少子化対策が必要だと話題になります。
いつか、この物語の世界に行き着くのかもしれない。
少なくとも、技術的にはそうなってもおかしくはない。
それがなお怖いと感じるところです。
そして、出産のための強い動機となるのが殺意。
好きな人と家族を持ちたいという愛情でもなく、自分の遺伝子を遺したいという意志でもなく、10人子どもを産むことも厭わないほどの強い感情。
「そんなに一途に誰かを殺したいって想い続けることができるなんて」
始めの方でそういうセリフがあって、それは一途に誰かを好きで居続けられるって素敵、という恋愛小説にありがちなセリフと似ているように思えてしまえました。
誰かを殺したいと思ってしまうこと。
それは程度にもよるけれど、誰でも1度は抱くことのある感情なのかもしれない。
でも、それをぐっと押さえているのが理性なわけで、それを抑え切れなくなってしまったら、そこかしこで殺人事件は頻発する。
人を殺すことが正当化されてしまうのは絶対によくないことだと、私は思うのです。
実際、この物語でもこのシステムに違和感を感じている人が出てきて、生きること、人を殺すことの罪の重さを、作者は書きたかったんじゃないかな、と思います。

表題作の『殺人出産』の他、『トリプル』、『清潔な結婚』、『余命』の4編が収録されています。
他の3編も、今の社会問題を真っ向から取り上げていて、いろいろ考えることが多い本でした。

殺人出産

殺人出産

  • 村田 沙耶香

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