日常生活の中に潜む魅力。

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春の庭

私たちはいかに見落としているか

舞台となるのは、取り壊しが決まった世田谷のアパート。
主人公の太郎は同じアパートに住む女性、西さんがある家に興味を持っていることを発見します。
ひょんなことから西さんと親しくなり、彼はその家の写真集をもらいます。
その写真集が『春の庭』で、古い洋館の内部の写真と間取りが記されています。

洋館には写真集に写っているのとは違う家族が住んでいて、同じ家なのに佇まいは変わっています。
太郎が住んでいるアパートもだいたい同じ間取りのはずなのに、住んでいる人によって部屋の様子が違っています。
そのことは当たり前のはずなのに、少し不思議に感じます。
街もそう。
同じ場所のはずなのに、違う道を通ると街の違う側面が見えてくる。
同じ道を誰かと歩いていても、目に留まる景色は全く違う場合もある。
読んでいくと、日常生活の中にそういう魅力がたくさんあることに気づかされました。

この本を読んでいるといかにエンタメに慣れすぎているかを痛感します。
何か事件が起こって、それが展開していって、時には大どんでん返しがあって、結末までたどり着く。
けれど、小説は、エンタメが全てというわけではない。
派手な展開はないけれど、ちゃんと起承転結があって、自分の日常生活を疑うような視点がある。
それも一つの小説の形なのでしょう。

春の庭

春の庭

  • 柴崎 友香

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